= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.039

2008年9月12日
(毎週金曜日発行)


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Card Magic Library 第2巻

第6章 エルムズレイカウント使用作品

Part 1 ツイスティングエーセズ系

ダイ・バーノンの大傑作'ツイスティングエーセズ'ほど、演じるマジシャンの技量の差が出るカードトリックはないでしょう。それには2つの理由があります。第一に、この作品の不思議さが、エルムズレイカウントという技法の持つ力に大きく依存しているため、エルムズレイカウントを正しく行えるかどうかが、大きな分かれ目になっていることです。

つぎに、この作品はただ4枚のAが連続的にひっくり返るという、同じ現象が4回繰り返されるというものではありません。最初の3枚がひっくり返るのは、スペードのAがひっくり返ることに対する、布石なのです。「スペードのAが扱いにくいカード」ということがセリフで強調されることは、このプロットの重要な核心です。プロットを理解しないで演じると、'ツイスティングエーセズ'は、まことに平凡な作品になってしまいます。

最後にスペードのAが表向きになっているのを見せるとき、4枚をいっぺんに広げないで、1枚ずつ広げていくバーノンのやり方をおぼえていますか。いっぺんに広げた方がインパクトが強いと思われるのに、どうしてそのような広げ方をしたのでしょうか。それには明確な理由があります。それを理解できるかどうかが、上級者と中級者の分岐点と言っても過言ではないと思います。

エルムズレイカウントを使うトリックの原点として、以上の点を明確に理解していただくため、'ツイスティングエーセズ'は、ルイス・ギャンスンの原解説を正確に翻訳して収録したあと、詳細にわたって私の解説を加えています。

その他に、'ツイスティングエーセズ'の重要なバリエーションや関連作品が4作品収録されていますが、その中には、パケットトリックで一世を風靡した、サム・シュワルツの'バックフリップ'も含まれています。

Part 2 ロイヤルマリッジ系

4枚のKと4枚のQを使い、同じマークのKとQがペアになるという現象のマジックが5作品収録されています。中でも、ロイ・ウォルトンの'マリッジブローカーズ'は、アレックス・エルムズレイが生み出したワンアヘッドの原理による手法をもとに、さらにパワーアップさせた珠玉の作品です。

Part 3 オイル&ウォーター系

今回の著述作業でよくわかったことは、エルムズレイカウントがあるタイプの'オイル&ウォーター'に最適な技法であることです。それは、混ぜたものが分離する現象と、瞬間的に混ざる現象が組み合わされたタイプのものです。なぜなら、この技法は完全に分離していないカードを完全に分離しているものとして見せられると同時に、そのことがつぎの混ざる現象を生み出す源となっているからです。

6作品収録した中で、とくにピーター・ケーンの'赤い油と青い水'は、表での分離と混ざる現象のみならず、裏での分離と混ざる現象も表現され、現象がじつに明確に伝わります。

Part 4 オイル&クイーン系

ロイ・ウォルトンの'オイル&クイーン'は、大傑作だと言う人と、駄作だと言う人に分かれます。私は後者の1人でした。しかし、ここに収録した5作品を順番に読めば、駄作だと言う人が指摘した弱点が、いかにして解決されて、本当の大傑作になったかがわかると思います。

自分の作品を自慢するのも気が引けますが、ジョン・ラカバマジージョンをさらに発展させた私の'エヴァポレーション'は、パケットトリックとして商品にしようかと思ったほどの完成度です。

Part 5 予言系

エルムズレイカウントによって、選ばれたカードと予言カード
一致させてしまうという、多くの作品例のない作品2点の解説。

Part 6 リセット系

ポール・ハリスの'リセット'ほど、多くのマジシャンに改作された作品はありません。ハリスの原作の忠実な解説から始まって、私がベストバージョンだと思う、ジェイムス・スウェインのバージョン、'メタモフォフィス'まで、7作品を収録いたしました。(スウェイン作品は、発表後10年経過していないので、方法は解説していません。重要なポイントについて説明しています)。

Pat 7 エースアセンブリー系

エルムズレイカウントを使用するエースアセンブリーが、これほどあるとは思いませんでした。6作品のうち、とくにデヴィッド・ブリトランドの'ブルーブラザーズ'は、他を圧倒するクライマックスがあります。1カ所に集まるまで、ずっと青裏だと思っていた4枚のAが、赤裏になっているのです。そこに至るまでのハンドリングで、終始青裏のAが印象づけられていますから、そのどんでん返しは、周到に仕組まれたミステリーの味わいがします。しかも、その現象が'4人の悪者たち'という意味のタイトルにぴったり合っているのです。ストーリートリックが好きではない私も、この作品は解説通りのセリフで演じたいと思いました。

Part 8 インパクト系

ロイ・ウォルトンの'インパクト'は、4枚のAを封筒に入れて、まず相手が指定したAの入った封筒が他とは逆向きにひっくり返ります。封筒の向きをそろえますが、こんどは相手の指定したAだけが、封筒の中でひっくり返ってしまいます。

原案で使われているのと同じ封筒と原理を利用しながら、現象の異なるバリエーション3作品も収録されています。

Part 9 トランスポジション系

収録3作品の中で、アルド・コロンピーニの'トリフル'は、ジョン・バノンの'ツイステッドシスターズ'からツイスティング現象をはぶき、2回目の予期せぬトランスポジション現象を加えたような作品です。エルムズレイカウントで現象を見せた直後に、1枚の異質なカードがパケットに混ざっている弱点を、逆手に取って別の現象を生み出しています。

Part 10 ワイルドカード系

ここに収録されたデレク・ディングルの'ワイルドムーブ'は、ハマンカウントをエルムズレイカウントポジションで行えるという、スイッチがバレやすいハマンカウントの欠点を克服する、画期的な手法です。ディングルに触発され、そしてホワン・マヨラルの'ワイルドカード'に影響を受けた、私の'ミラクルイレイザー'は、もうひとつの自画自賛する作品です。両面がブランクに変化するワイルドカードは、他に類を見ないと思います。

Part 11 その他

ここに収録され7作品を見れば、エルムズレイカウントが、いかに様々な現象を生み出すポテンシャルを持っているかわかると思います。

Part 12 マルチカラー系

表の変化のあとに、裏の変化が起こるという、ダブルイフェクトの作品が2点解説されています。



第7章 記憶術トリック、第8章 スタニオンズマジック第2部と続きます。次号にて目次を紹介いたします。

ではまた来週。