= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.110

2010年1月22日
(毎週金曜日発行)


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"Card Magic Library第5巻"

"Card Magic Library第5巻"の編集が最終段階に入っています。3月前半には発行できる見込みです。第5巻は、マセマティカルな原理を広く深く追求したものですから、いままで以上に読み応えのある内容となっています。今週から何回かにわたって、内容紹介をさせていただきます。

マセマティカルカードトリックというと、パズル的なトリックで、原理は面白いが、マジックとしての不思議さのインパクトが弱いとお考えの方が多いと思います。たしかにそのような傾向のマセマティカルカードトリックは少なくありません。私がファイルしていた350種類の中には、原理が面白いという理由で記録したものが多かったのも事実です。

しかしパズル的面白さだけのトリックをふるい落としたあとの、今回収録した140種類は、見せるマジックとして優れた作品です。それらを再読した私自身が、それらの素晴らしさにあらためて驚かされました。

考えてみれば、マジックの不思議さというものは、原理というものが不思議さを生み出す原点です。ダブルリフトという技法を使ってカードを変化させるマジックも、カードを重ねて見せることによって違うカードに見せられる、という原理が根底にあるのです。キーカードでさえも、特定のカードを目的のカードの隣りにくっつけて、目的のカードの位置を認知するという原理が根底にあります。

マセマティカルな原理というものは、ダブルリフトの原理やキーカードの原理に劣るものではありません。いままでマセマティカルなトリックがパズル的だという印象が強かったのは、クリエーター自身がマセマティカルなフレーバーを好み、そのフレーバーを現象にも反映させてきたことに、人に見せるマジックとしての弱さがあったのではないでしょうか。

今回収録した140種類は、現象が素晴らしいという基準で選定いたしました。おそらく読んでいただいた方は、いままでのマセマティカルトリックのイメージを一新させることでしょう。マセマティカルな原理こそ、強力な不思議さを生み出すことのできるものであると。

ギルブレスプリンシプル

デック全体を赤いカードと黒いカードを交互にセットします。このデックを表向きに置いて、両方のパケットのフェースに赤いカードと黒いカードが出るように、だいたいまん中あたりでカットします。そして2組をリフルシャフルします。

そのあと上から2枚ずつペアにして取っていくと、必ず2枚は赤いカードと黒いカードの組合せになります。これが、雑誌"リンキングリング"1958年7月号に登場した、数学者ノーマン・ギルブレスの考案した'マグネチックカラー'に採用された、ギルブレスプリンシプルです。現象としては、デックを背後に運び、よくシャフルされたデックから、赤いカードと黒いカードをペアで出していくというものです。

ギルブレスのこの原案通りに演じたのでは、マセマティカルなフレーバーは払拭されていません。これをマジックとしてグレードアップさせたのが、他ならぬダイ・バーノンです。バーノンはデックをテーブルの下に入れ、左右の手に1枚ずつ持ってテーブルの上に出していきます。赤いカードはつねに左手、黒いカードはつねに右手に持って出していくのです。これは赤黒をペアで出していくのとは決定的に違います。赤いカードと黒いカードを指先で判別できるというプレゼンテーションで見せられるからです。

ギルブレストリックの多くで使われている、赤黒交互にセットしたデックには、演技上、ひとつの弱さがあります。それは、演技を始めるときに、デックを表向きに広げてよく見せることができないということです。その弱点を見つける手法を、私が見つけて解説いたしました。最初に赤と黒がよく混ざっていることが見せられるようになったのです。その手法によって、多くのギルブレストリックが一気にパワーアップいたしました。

そして数々の素晴らしいギルブレストリックの中で、とくにお奨めするのが、フランク・ガルシアの'グランドスラム'を土台にして、奇蹟レベルに高めた作品、'伝説のグランドスラム'です。これは、単独商品としていつか販売したいと考えていたものですが、"Card Magic Library"の価値を高めるためにも、第5巻に解説いたしました。

私は宣伝用の美辞麗句を書くことは避けてきましたが、このトリックこそは、加藤英夫の最高傑作として、自信を持って送り出せるものと誇らせていただきます。つぎのような現象です。

グランドスラムとは、ブリッジゲームにおいて、同じマークのカードをAからKまでそろえるという、最強の手のことです。それをテーマにしたのがこのマジックです。

デックからスペードのAからKまで13枚を抜き出します。表向きに広げて抜き出していきますから、スペードのカードが余分にないことがはっきりわかります。

スペードの13枚と他のカード13枚を並べて置きます。そして、マジシャンが2つのパケットから適当な順で1枚ずつ取っていき、ひとつのパケットに重ねていきます。そのように取ったカードをデックの上に置きます。それからデックのトップから13枚ディールすると、それらはスペードの13枚です。

つぎはスペードの13枚と他のカードを混ぜるのを相手がやります。それでもトップから13枚ディールすると、全部スペードのカードです。

最後はスペードの13枚も他のカードも表向きにして、両方を混ぜます。混ぜたカードをデックの上に置いて、トップから13枚ディールすると、それらはやはりスペードのカードなのです。


他にもギルブレスプリンシプルだからこそ生み出すことのできる、合計25作品を収録いたしました。この章を読んでいただいただけでも、マセマティカルプリンシプルの強力なポテンシャルを実感していただけると思います。

テレビ視聴のその後の展開

前回、パソコンでテレビを見るようになったことを書きましたが、書いたことに間違いがありましたので、その後の展開とともに、間違っていたことを訂正させていただきます。間違っていたのは、番組を検索するとき、マウスを使用した方が楽に行えると書いたことです。

先週の段階では、パソコン用の23インチのディスプレイでテレビを見ていましたが、もっと大きな画面で見たいと思い、37インチの液晶テレビを購入いたしました。そしてリモコンで番組表を検索することになりました。番組を端から端まですべてチェックするには、マウスよりもリモコンの方が楽なのです。たんに十字キーを押し続けるだけでよいのですから。ランダムに検索するにはマウスがよくて、シーケンシャルに検索するには十字キーの方が優れているということです。

そのような検索機能のことだけではなく、やはりパソコンのテレビ視聴ソフトよりも、テレビに備わっている機能の方が、はるかに進歩していることもわかりました。25%だけ早送りする見方では、音声も聴くことができ、2時間の映画を1時間半で見られます。おっかけ再生などもパソコンのソフトにはありません。

というわけで、マジックにかぎらず、ワイン、音楽、旅行、経済番組、映画など、番組表で気になったものはどんどん録画予約するというのが、毎日朝9時の私の日課となりました。とりあえず録画したあと、見る価値があるとわかったものだけ、全編を見るという見方をしています。

ではまた来週。