= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.138

2010年8月6日
(毎週金曜日発行)


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第6巻が校了いたしました!

"Card Magic Library"第6巻の最終校正が終わり、印刷会社の手に渡りました。数日中には完成日が確定いたしますので、来週には発送開始日のお知らせと、ご注文受付を開始できると思います。第6巻は、いままでの巻の中でベストのものになったと確信しています。ご期待ください。

第6巻は'フォーエースアセンブリー'特集です!

発行の順番予定を入れ替えて、第6巻は'フォーエースアセンブリー'の特集となりました。全部で80種類の'フォーエースアセンブリー'系の作品を集録いたしました。

80作もの'フォーエースアセンブリー'ということで、似ているものばかりではないかと心配されるかもしれません。読んでいただければ、そんな心配は吹き飛びます。"バラバラの4枚のAが一カ所に集まる"という、ひとつのテーマに属する作品を、タイプ別に集めたからこそ、そのテーマにもとづくバラエティさと、それぞれのタイプのアセンブリーの魅力が、いままで以上に伝わってきます。

'フォーエースアセンブリー'にこそ、カーディシャンたちがカードマジックの魅力を追い求め続けてきた、歴史絵巻のようなものを見ることができます。

'コナスエーセズ'のフルバージョン発見!

この豪華絢爛な歴史絵巻の始まりは、'コナスエーセズ'の真のバージョンの発掘から始まります。'フォーエース'アセンブリーの原点だとされてきたこの作品は、ホフマンの"モダンマジックや、"ターベルコース"に書かれているものが、原作品だと思われてきました。しかしそれらは'コナスエーセズ'の前半でしかありませんでした。

私は第6巻の編集調査において、雑誌"ジニー1941年11月号に、ジーン・ヒューガードが"Nouvell Magie Blanche Devoilee"(ポンサン著、1853年)から、'コナスエーセズ'をフランス語から英語に翻訳しているのを見つけました。それを正確に日本語に翻訳して収録いたしました。

'コナスエーセズ'は、なぜか'ジャズエーセズ'に似ています。1枚ずつAと思われているカードが違うカードになり、テーブルのパイルに集まっていきます。これを読むと、「歴史は繰り返す」という言葉が浮かびます。コナスとピーター・ケーンの両傑作が、時代を飛び越えて出会ったかのようです。

'オーブントラベラーズ'はなぜ'インビジブルパームエーセズ'に変わったか

現代カードマジックの2大巨匠である、エドワード・マルローとラリージェニングス。この2人には'オープントラベラーズ'という同名作品がありましたが、のちにジェニングスが同作品の名称を'インビジブルパームエーセズ'と変えざるを得なかった理由が、当書には書かれています。

フレッド・ブラウエの功績

そして手法的にぜひ注目していただきたいものは、エドワード・マルローの'シンプレックスエーセズ'での解説です。このバージョンは、ブラウエアドオンを採用したということで、それまでパスやパームが主流であったものを超越して、現代スタンダードアセンブリーの原点となりました。

しかしながらこの功績は、じつはほとんどエドワード・マルローのものではありませんでした。1948年に'シンプレックスエーセズ'が発表される3年まえ、雑誌"ヒューガードマジックマンスリー"1945年7月号に、フレッド・ブラウエが'ブラウエアドオン'を発表したとき、ブラウエはこのすり替え方法を、'フォーエースアセンブリー'の冒頭に使うものとして解説していたのです。

ブラウエアドオンの神髄

おそらくブラウエアドオンを使うやり方は、多くの方が使われていると思いますが、そのやり方においてのブラウエアドオンのやり方は要注意です。ピーター・ケーンが'クラックアセンブリー'の解説の前書でつぎのように書いています。

私は4枚のAを見せてからデックの上にのせて、そこでAを見せてそれからまたテーブルに置く、というやり方のエースアセンブリーを好みません。この不自然な動作はそれだけで疑念を持たせます。

ブラウエアドオンを不用意に行うと、ケーンが指摘したような怪しさを発生させてしまいます。私はそのような怪しさをいっさい発生させない、ブラウエアドオンのやり方を解説いたしました。

Part内容

Part 1 草創期 3作品
'コナスエーセズ'から'バートラムエーセズ'まで、古典バージョンについて。

Part 2 現代スタンダードアセンブリーの原点 1作品
'シンプレックスエーセズ'解説と、プラウエアドオンのエッセンス。

Part 3 ブルーブアセンブリー 3作品
テーブルの上に置いたAの上にのせるカードの中に、Aがないことを見せるバージョン。J.Cワグナーの'正直者のエースアセンブリー'など。

Part 4 マジシャンズチョイス 4種
Aが集まるパイルをフォースする方法。

Part 5 フォースレスアセンブリー 4作品
フォースを使わず、客が選んだパイルにAを集めるバージョン。ヤコブ・ダレイの'999番目のエーストリック'など。

Part 6  パーフェクトアセンブリー 4作品
4枚のAをすり替えなしに、本当にテーブルに置いて進めるバージョン。'ステンセルエーセズ'の構成には、本当にAを飛行させたように見せるという執念を感じます。

Part 7 バリードエーセズ 5作品
Aを含めたスレーヴパケットをデックの中に入れて、Aを消失させるというタイプです。リン・シャールズやエドワード・マルローバージョンを土台として、マイケル・デマルコの'アドバースアドベンチャー'が完成度が高いものです。

Part 8 追加型アセンブリー 2作品
通常のアセンブリーでは、Aの上にエクストラカードをのせますが、このPartのバージョンは、エクストラカードの上にAをのせていきます。ダローの'ダイヤモンドバー'は、まさに様式美を感じさせる傑作です。

Part 9 スローモーションアセンブリー 3作品
スローモーションアセンブリーでは、"スターオブマジック"のバーノンバージョンが有名ですが、私はそれより先に 雑誌"スフィンクス"発表された、ダイ・バーノンモビライジングエーセズ'の方が優れていると思います。バーノン自身が書いた文章を翻訳いたしました。

Part 10 色違いアセンブリー 3作品
4枚のAと12枚のエクストラカードが、裏面の色が違うものを使うバージョンです。ダイ・バーノンの'フォーブルーバックエーセズ'がこれほど素晴らしいものだと、今回再認識いたしました。

Part 11 ジャズエーセズ 5作品
ピーター・ケーンの原案は、第2巻に集録いたしました。カードマジック解説書には、ケーンの原案の手法だけをいじりまわしたようなバージョンがたくさんありますが、このPartには、現象の違いの面白さを重視して集録いたしました。手前味噌で恐縮ですが、私の'ジャズエーセズをもういちど'は、あるマジック大会で蓮井 彰氏に見ていただいて、「感動しましたよ」と言っていただいた自信作です。

Part 12 プログレッシヴアセンブリー 3作品
1枚のAがひとつのパイルから隣りのパイルに移り、それら2枚がつぎのパイルに移り、というようにつぎつぎ隣りのパイルに移っていき、1つのパイルの集合するというタイプです。このタイプの原点となったケン・クレンツェル作品などが収録されています。

Part 13 ディスアセンブリーエーセズ 4作品
集まった4枚のAが、もとのパイルに瞬間的に戻ってしまうというキッカーエンディングタイプです。ピーター・ケーンの'ディスアセンブリー'など。

Part 14 オー・ヘンリーエーセズ 4作品
スローモーションタイプの現象で、3枚目の飛行のあと、最後はマスターパイルに集まらず、3番目のパイルに集まってしまうというタイプです。このタイプは、あまりにも唐突な現象が起こるので、私自身は演ずることはありませんでしたが、今回フランク・ガルシアが解説している'オー・ヘンリーエーセズを再読して、面白い演出を考えました。3番目のパイルに移ることを、演出で意味と面白さのあるものにするアイデアです。

Part 15  ギャフアセンブリー 6作品
ギャフカードを使ったバージョンを集めました。ハーラン・ターベルのバージョンは、Aが間違いなく含まれているのが見せられたパイルをデックの中に入れて、デックの中から完全に消えたことを見せるという、とんでもないギャフカードを使用したバージョンです。'マクドナルドエーセズ'はダブルフェースを使いますが、ダブルバックを使うバージョンがあるのです。

Part 16 マクドナルドエーセズ 3作品+A消失法11種
ここに解説されたジュダバージョンでは、演技の冒頭で、Aの裏表の改めと、余分なAが使われていないことの改めが行われています。また'マクドナルドエーセズ'では、各パイルからAを消失させる見せ方が、魅力の多くを占めます。優れた消失法を11種類集めました。これらをマスターすることによって、マクドナルドエーセズがさらに光り輝くことになるでしょう。

Part 17 リアルゴーンエーセズ 3作品
ラリー・ジェニングスの傑作のまえに、エドワード・マルローの'リアルゴーンエーセズ'と、ウィリアム・ミーゼルの'インビンシブル'あり。これを知らなければ、カードマジック研究の一部が欠落しているといっても過言ではありません。

Part 18 その他 7作品
ブランクカード4枚のアセンブリーである、ジョン・バノンのトワイライトゾーンアセンブリー'は、まことに幻想的な作品です。

Part 19 アートオブマジックの5つのアセンブリー  5作品
1909年に発行された、ネルソン・ダウンズの"アートオブマジック"には、独特なフォーエースアセンブリーのバージョンが書かれています。2000年のFISMでヘンリー・エバンスがカードマジック部門で優勝できたのも、ダウンズが解説したバージョンの影響を受けています。

Part 20 ロイヤルアセンブリー 10作品
各マークのA、J、Q、Kがアセンブリーするというこのタイプは、ダイ・バーノンの'カードパズル'から始まりました。この分野もまた、多くのクリエーターの創作意欲を刺激してきました。その中で傑作と言われるのが、ジョージ・キャプランの'ロイヤルアセンブリー'です。マルローもジェニングスもタマリッツも、このキャプランバージョンに刺激を受けました。

Part 21 総括
フォーエースアセンブリーを演じる上での、重要ポイントをまとめました。マジックというのは、作品をおぼえるだけでなく、自分の演技として磨き上げる作業が重要です。その指針として参考になれば幸いです。



来週は目次をご覧いただき、きらめく作品が第6巻の中に集められていることを見ていただきたいと思います。

ではまた来週。