= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.164

2011年2月4日
(毎週金曜日発行)


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"Card Magic Library"第7巻内容紹介・その2

第22章 ビドルムーブ

ビドルムーブとそれを使用した作品'トランセンデント'は、雑誌"ジニー"1947年に登場しました。この作品では、5枚のカードを表向きでカウントして左手に取り、その中に相手が選んだカードがあるのを見せ、選ばれたカードが消失してポケットから出てくるという現象です。

スチールしたカードをポケットからではなく、裏向きのデックの中に表向きに現すというアイデアは、リチャード・ブルースが雑誌"ヒューガードマジックマンスリー"1951年9月号に発表しました。これこそが今日の人気カードマジック'ビドルトリック'の原点とも言える作品です。

その作品のバリエーションをエルマー・ビドルが'ビドルスルー'という名称で、雑誌"ゼン"1960年7月号に発表しています。しかしながらどちらも今日の'ビドルトリック'とは趣が違います。それぞれの作品解説から、そのへんの違いを興味深く読んでいただけると思います。

技術的に特記されるのは、ブレークの代わりにサイドジョグを使用する、ビドルムーブのやり方が解説されていることです。ブレークを使うと左右のアングルに弱いのですが、その弱点を解決するとともに、自由自在にスチールやドロップができるという、機能強化の効果がある優れたやり方です。

ビドルムーブを発展させた技法として、'ハマンカウント'があるわけですが、アードネスブレークの機能を採り入れた方法が解説されています。これは、ヴィーザーコンセプトという技法のバーノンのやり方を、私が'ハマンカウント'に応用したものです。パケットスイッチするときにつかえたり、気配を感じさせないシームレスなカウントを実現しています。

'ビドルムーブ'の機能を究極まで使いこなすと、つぎのようなことができます。

4枚のKを表向きに右手に持ち、デックの上に1枚ずつ取っていきます。4枚カウントし終わったとき、すでにそれぞれのKの下に同じマークのQがはさまっています。それだけを演じただけで、ロイヤルペアトリック(4枚のKと4枚のQを使うトリック)の見事なオープニングになります。

作品として傑出しているのが、J.K.ハートマンの'インベターオーダー'です。つぎのような現象です。

13枚のカードのうち、相手に3枚を渡し、それらを残りの10枚の好きな位置に入れさせます。13枚を表向きに広げると、それらはAからKまでが並んでいます。

この章の収録作品数:23点。


第23章 パス

パスについては前号において、"ゲオフ・ラタが世界でいちばんうまいと思う"と書きましたが、技術的には最高レベルではあるが、もっともよくない使い方であるということを説明して、バスという技法の重要性を強調しています。

前号で指摘した、アングル、右手をデックにかける口実、という重要ポイントに加えて、さらに重要なポイントを書いています。それはパスは原則として、他の動作をオーバーラップさせて行うべき技法だということです。(アンビシャス現象など、カバーなしで行うべき場合もあります)。

以上3つの重要ポイントは、私が見つけたものでも現代になって確立されたものでもありません。フランス人のJ.N. ポンサン著、“Magie Blanche Devoilee”
(1853年)に書かれている作品解説の中に見られるのです。

同書に解説されたものは、プロフェッサー・ホフマンによって"モダンマジック"の中に多くが引用されたと言われていますが、同書の中にも、他のどこにも書かれていなかったものを、今回の調査中に、雑誌"ジニー"1942年1月号に見つけて、第7巻に収録いたしました。

それはポンサンが書いたものを、ジーン・ヒューガードがフランス語から英語に翻訳したもので、ヒューガードは'ポンサンリバイバル'と題して書いています。つぎのような現象です。

4人の客に2枚ずつのカードを取らせます。それらがデックの中に戻されて、どこに行ったかわからない状態にされます。魔法をかけると1人目のカードがトップとボトムに現れると言って、デックを振ります。そしてトップカードとボトムカードを見せると、1人目のカードです。またデックを振るとトップとボトムカードが2人目のカードになっています。そのようにして、つぎつぎと客のカードがトップとボトムに現れます。

デックを振るという魔法の動作、ボトムカードを見せるために右手でデックを返す動作、そしてトップとボトムからカードを現わすという現象自体が、右手をデックにかける正当性を与え、動作のカモフラージュの働きもしているのです。

なおこの作品は、客に2枚ずつ記憶させるというのはたいへんですから、デックの中に分散して入れた、4枚のQと4枚のKを、各ペアごとに出現させるというようにアレンジすれば、今日でも十分実演価値のあるマジックとなるでしょう。私は素晴らしい作品を発見したと、大喜びしたものです。

作品的にお奨めなのは、私の'リフルエーセズ'と、フランク・ガルシア&ジェイ・オーシの'エイペクスエーセズ'を連結した作品です。つぎのような現象です。

デックがよくシャフルされたあと、客が好きな数を言います。たとえば23が指定されたとします。客自身がその枚数だけディールします。するとそこから4枚のKが現れます。つぎにその4枚のKを表向きにデックのトップに置くと、それが3枚に減り、2枚に減り、1枚に減り、最後に1枚もなくなってしまいます。デックを広げると中央に表向きの4枚のKがあり、間に裏向きのカードが1枚ずつはさまっています。それらを取り出すと、4組のKとQのペアとなっています。

この章の収録作品数:10点。

第24 章 スプレッドカル

この章は、マイケル・クローズの解説の見事さにつきます。コスチャ・キムラットのDVDを見てもマスターできなかった方も、クロースの要点をとらえた解説によって、目から鱗のように、マスターする手がかりを得ることができるはずです。

作品としては、若くして亡くなったクロースアップマジックの名手、片倉雄一氏の傑作'離ればなれの探偵カード'があります。この作品は私の作品をもとに片倉氏が改案したものですが、今回、その片倉氏のやり方をさらに改案した、私の'ピンサージャックス'を解説いたしました。間違いなく私の代表作のひとつになると確信する作品です。つぎのような現象です。

選ばれたカードがデックに戻されたあと、デックを両手の間に広げ、中央より少し手前のカードを表向きに返してアップジョグさせます。さらにカードを広げ、中央より少し下のカードを表向きに返してアップジョグさせます。カードを閉じ、アップジョグカードを押し込みます。2枚の表向きのカードは間違いなく離れた位置に入りました。間髪をおかずにデックを広げると、2 枚の表向きのカードの間に1 枚の裏向きのカードがはさまって、それが選ばれたカードなのです。

この章の収録作品数:8点。

第25章 マルティプルシフト

'マルティプルシフト'という技法は、何枚かのカードをデックに分散させてアップジョグ状態に入れて、それらをデックの中に押し込んだと見せて、1カ所にコントロールするものです。

押し込んだあとに、カットして終わるものと、シャフルを続けて終わるやり方があります。このことについて、ロイ・ウォルトンの考え方を引用し、それについて考察しています。ウォルトンはつぎのように言いました。

“マルティプルシフトをやってカットするだけなら、そのあとヒンズーシャフルを続けるよりも、カードが分散して入れられたことが明確に伝わり、しかも疑いを起こさせません。もしもシャフルを続けたら、そのときに何かをやったと感じさせることになります”。

私はこの考え方と正反対の意見を持っています。それがどのようなものかは、第7巻を読んでください。この紙面だけで説明できることではありません。少なくとも、マジシャンでない人に何人かに両方のやり方を見せて、シャフルする方がよいという結論を得ています。

'マルティプルシフト'を使用した作品としては、ジャック・エイヴィスの'インプロンプチュアンリミテッド'が面白く、つぎのような珍しい現象です。

4枚のQがデックの中に分散されて入れられます。4枚のKのうち、相手が好きなKを指定して、そのKをデックのトップに表向きに置いて魔法をかけます。そのKをどけてトップカードを表向きにすると、そのKと同じマークのQが出てきます。同じように、つぎも相手の指定したKをのせて魔法をかけると、そのKと同じマークのQがトップから現れます。3 枚目、4 枚目についても同様です。

この章には、私が考案した中では傑出していると自負している、'分散アップジョグ'という技法が解説されています。ボトムにある4枚のカードを、いかにもデックの離ればなれのところからアップジョグして出して見せる技法です。この技法をダイレクトに応用した'クローズマイアイズ'は、つぎのような現象です。

4枚のAをデックの中にバラバラに入れ、よくシャフルします。ここで目隠しをします。その状態でカードを両手の間に広げていき、ところどころでカードをアップジョグしていきます。目隠しを外して、アップジョグした4枚を見せると、相手の指定した数のカードです。

この章の収録作品数:9点。


次号において、内容紹介の続きと目次をご覧いただきます。

それではまた来週!