= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.240

2013年11月29日

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雑誌や本の中に面白い話を見つけたとき、できるだけ翻訳で紹介していきたいと思います。今日はそのようなものの第1弾として、かなり長いですが頑張って翻訳したものを丸ごとお届けいたします。

ダブルバックカード物語
= ウォルター・ギブソン、雑誌"ニューカンジャラーズマガジン"、1946年3月 =

デランドのメカニカルカード(今日のギャフカード)の調査によって、デランドはありとあらゆる仕掛のカードを発明し、今日存在するもののほとんどすべてが、天才セオダー・デランドによって考案されていたことが判明しています。

アードネスのたった25セントの"エクスパートアットザカードテーブル"が、カードマジックの技法の大半をカバーしていたのと同じように、デランドは仕掛カードの分野をを、1点につき数10セントという商品でほとんど埋め尽くしたと言えるのです。

デランドは商品としては、初めてダブルフェースを世に送り出しました。
(それ以前にホフジンサーが使用していました)。フォーエースのアセンブリートリックもありましたし、彼の'ファントムカード'は、1枚のカードに数枚のカードを広げて印刷するカードの最初のものでした。'ピッキットアウト'に見られるフォールスインデックスなどは、その後フォーシングパックにも応用されることになりますし、彼のクロック式マークドデックは、今日でも売られています。

それらの中でも、彼の貢献が見られる顕著なものとして、'ツーカードモンテ'があります。このトリックがどんなものかは、デランドの初期の広告文から抜粋するのがよくわかると思います。デンラドはけして誇張しないで明確に事実を伝えています。

"あなたは2枚のカードの裏と表をよく見せます。ニセのインデックスや怪しいところがないのがわかります。1枚を表向き、もう1枚を裏向きにテーブルに置きます。そして表向きのカードを手でおおって、裏向きのカードが何であるか当てられるかどうか、ちょっとした金額を賭けようと言います。マジシャンはその賭けに勝ちます。誰もそのカードを当てることはできないのです。何でも知っていると思っている自信家をへこますのに最適です"。

このトリックには2枚の特別なカードを使います。1枚はダブルフェイサーで、一面がAで、反対面が2が印刷されています。もう1枚はダブルバックカードです。これらのカードの有効性をお伝えするために、デランドの説明書から引用します。


2枚のカードを一方の手でやや広げて持って客に見せます。一方は表向きのAで、他方は裏向きなので何だかわかりません。あなたは「私が持っているのはAと2です」と言ってから、2枚をひっくり返しながらテーブルに置きます。すると表向きに現れるのは2ですから、裏向きのはAであるように見えます。

つぎに片手で表向きの2を覆い、誰かにAを手で覆ってもらいます。あなたが覆ったカードを表が見えないように取り、ポケットに入れます。カードを覆っている客に、「あなたの手の下のカードは何ですか」とたずねます。彼はAだと答えるに違いありません。

彼に手をどけてカードをひっくり返させます。反対側も裏ですから、ここで観客は笑います。


グレン・グラバットは"エンサイクロペディアオブセルフワーキングカードトリックス"の中で、これがダブルバックカードを使った最初のトリックであるという、デランドの主張に同意しています。しかしながら彼は、あたかもデランドがダブルバックカードの有用性に気づいていなかったかのように書いています。グラバットの文章から抜粋します。

"デランドの説明書の最後の数行から判断すると、かれは'ツーカードモンテ'をたんなるジョークとしてしかとらえていなかったようです。最後にダブルバックカードの正体を見せてしまっているぐらいですから。ダブルバックカードはその後多くのマジシャンによって有用に発展させられていますが、それを考案していながら、デランド自身はアイデアを発展させられなかったのです"。

グラバットのその批判は2点において不当でありました。ツーカードモンテにおいてジョークとして使われたからといって、どのようにしてデランドがダブルバックを考案したか推測する根拠にはなり得ません。だいたいツーカードモンテで使われたわけではありません。

デランドの'ピッキットアウト'というトリックこそ、デランドの考案が世のマジシャンに貢献したかを示す好例です。それはスリーカードモンテの一種でした。それは大ヒットしとなり、多くのマジシャンが購入しました。あまりにも流行りすぎたのです。

そこでデランドはそのトリックに使われていたフォールスインデックスをやめて、ダブルフェースカードとダブルバックカードを使うことを思いつきました。

デランドがダブルバックカードをツーカードモンテだけに使ったのではないことを明確にしておきましょう。のちに彼はダブルバックカードとダブルフェースカードで両面を見せるターンオーバーのテクニックを生み出しました。
(これが今日のツーカードモンテに使われているもののようです)。

デランドはダブルバックカードを使って'インバートパック'を生み出しました。それはホフマンによって取り上げられ、彼の後期の著書に登場いたしました。それはデックを裏向きのカードと表向きのカードと交互に混ぜて、瞬時に向きがそろってしまうという現象です。これを見せられて驚いたマジシャンたちは、それがツーカードモンテと関係あるとは思いもつきませんでした。

というわけで、デランドはけしてアイデアを思いついただけでなく、それを発展させることもしてきたのです。ただし、ツーカードモンテはいまでも売られ続けていますが、インバートパックはコレクターズアイテムとなっています。

メンタルパック

いまこのトリックの現象を読んでも、十分現代でもメンタリストが使えるものとして、それなりの代金でも売れるようなものです。1組のデックを客に渡され、52枚のカードの異なるカードがあるのが確認されます。その中から客が1枚のカードを抜き、残りのデックをマジシャンが受け取り、後向きになります。そして選ばれたカードが観客に見せられます。

それから選ばれたカードがデックの中に戻されて、デックが選ばれたカードを見なかった客に渡されます。その客はカードの裏面を観客の方に向けてデックを広げ、マジシャンが見えている中からいちばん目立つカードを言ってくれと言うと、その客は選ばれたカードを告げるのです。

このトリックでは、1人の客を臨時のサクラに仕立てるという手法が使われます。マジシャンが後ろを向いているとき、デックをすべてダブルバックのデックとすり替えます。そしてその中に選ばれたカードを返させるのです。サクラになった客がカードを広げたとき、裏面の中に1枚だけ表のあるカードが見えるわけですから、そのカードの名前を告げることになります。

ウォルター・ギブソンのこの文章を読むと、現代でもスタンダードなマークドデックの原点がデランドにあり、'トライアンフ'さえ、デランドに出発点があったことがわかります。カードマジックの歴史は掘り下げれば、いくらでも現代につながる源泉を見つけることができます。

次号は、"Card Magic Magazine" No.20の案内となりますが、そのつぎの号においては、デランドよりももっと古い文献から、「あのカードマジックがそんな古くからあったの」と驚くべき事実を紹介いたします。