= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.243

2013年12月20日

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アル・コランの'レイジーマンズカードトリック'

'レイジーマンズカードトリック'については、"Cardician's Journal Special"第5巻、89ページに、"ローレインが演出を考えた"と疑惑の主張をしたという話を含めて、アル・コラン自身の解説とローレインの解説を比較して検討いたしました。

その中で、雑誌"アポカリプス"1997年6月号で、ローレインが演出が自分のものであると書いていると指摘いたしましたが、ローレインの文章は書きませんでした。今回はそれがどんなものであったかを翻訳してみたいと思います。

アウトトゥーランチ
= ハリー・ローレイン、雑誌"アポカリプス"、1997年6月 =

私は最近、ずっと以前、1962年に"クロースアップカードマジック"に書いた、'レイジーマンズカードトリック'の改案なるものを人から見せられました。同書においては、その作品はアル・コランのものであるとクレジットいたしました。同書が発行されたあと、同作品が本当はジャック・ミラーの作品であると聞かされました。ジャック・ミラーは友人でしたから、そのあとすぐ彼自身にたずねたところ、「あのトリックが優れているのは、あなたの本に書かれた演出が加えられたからですよ」と言いました。その演出を考えたのは、その時点で誰も知りませんでした。

彼がそう言ったのを聞いた瞬間、記憶がよみがえりました。

話は1957年にさかのぼります。リチャード・ヒンバーと私は親しい友人でした。彼はセントラルパークサウスのエセックスハウスのアパートに住んでいました。彼は電話をしてきて、「ここへすぐ来ないか。イギリスからアル・コランが来ていて、キミに会いたがっているよ」と言いました。アルには会ったことがないので、ぜひ会いたいと思い、デックを1組つかんですぐに出かけました。


アルと会ってずいぶん話し込み、そしていくつかのカードトリックで彼を驚かせました。すると彼も自分のデックを取り出して、ひとつのカードトリックを見せてくれました。それはたいへんシンプルなもので、演出も素っ気なくそれほど面白いものではありませんでした。

「私が後ろを向くから、キミはデックをカットして1枚のカードを抜いて、それをおぼえたらトップに置いて、デックをカットしてください。そうしたらデックを表向きに返して、カットして、さらにカットして、何回もカットしてくれたまえ。そしてデックを裏返してください。キミのカードはトップから8枚目にあります」。

それがアルが私に演じたときの見せ方でした。もうひとつおぼえていることは、彼がこれを演じたとき、最初はうまくいかなかったことです。私が「それは私のカードじゃない」と言うと、彼は「そんなはずはない。これがキミのカードだよ」と、変なことを言いました。しかも「じゃあキミが指示通りにやらなかったんだ」と、ちょっと失礼なことを言いました。

彼はデックを取り上げて、何枚かのカードを入れ替えたあと、先ほどと同じことをやりました。こんどはうまくいって、最後に私の選んだカードが出てきました。


私はこのトリックを見せられて、「私はいま本を書こうとしているのですが、よかったらこのトリックを書かせてもらえないでしょうか」とたずねました。彼「もちろんいいですよ」と答えました。

そしてタネンマジックショップから、"クロースアップカードマジック"が出版されました。(この本がどのように受け入れられたかはご存知のことと思います)。私はこのトリックが気にいって、よく演じるようになりました。私の見せ方は次第に磨かれていき、最後には"クロースアップカードマジック"に書かれたものになりました。

私が同書にアル・コランが見せてくれたトリックを書いたとき、アル・コランの作品だと書きましたが、私の考えた演出を含めて書きたいと思いました。そして一人称形式で書き始めると、文章は流れるようにまとまりました。私は題名を'レイジーマジシャンズカードトリック'としました。それは演出を示唆するものであったからです。

私はいかにもその演出が、アル・コランが私に見せてくれたものであるように書きました。実際はそうではありませんでした。やり方にもちょっとした違いがあります。セットするのは13枚ではなく、10枚に変えました。そして相手にカードを抜かせるとき、彼が演じたときの「好きなカードを1枚取って」ではなく、「デックのまんなかあたりに指をさし込んで」か表現を変えました。それは彼が私に最初に見せて失敗したのを防ぐためでした。

このローレインの文章を読んで、もういちど"Cardician's Journal Special"第5巻、92ページに書かれている、アル・コランが雑誌"アブラカダブラ"No.450(1954年9月11日)に書いている、'レイジーマンダズカードトリック'を読めば、あなたはあることを確信されるでしょう。

もしかして、この謎めいた記事は、ローレインの記憶違いから発生したのでしょうか。記憶術の大家でも、昔のことが曖昧になってしまうのかもしれません。

ところで今回の記事を書くにあたって、間違いがあってはならないと、私の資料を再調査するうちに、ダーウィン・オルティズが重要なことをマジックカフェで指摘しているのを見つけました。そのことについては、次号にて書くことにいたします。