= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.251

2014年2月24日

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デバイデッドスタック

"Cardician's Journal"No.249で、'Knocked Subconscious'というトリックの演技映像を取り上げましたが、私はその後、その映像が紹介されているマジックカフェにつぎのように投稿いたしました。

私は'Knocked Subconscious'のトレーラー映像を見させていただきました。方法はすぐわかるものでしたが、彼の演技は素晴らしいものでした。

しかしながらなぜ彼は、選ばれたカード以外のカードの表を見せなかったのでしょうか。もちろん私は彼が52枚の異なるカードを使っていたのはわかっています。しかし表を見せないなら、ワンウェイデックを使ってもあの映像の演技をできてしまいます。


するとしばらくして、あれを演じていたライアン・シュルツ氏本人から投稿があって、"本来なら使っているのがノーマルデックであることを見せられる"というような意味の投稿がありました。

私はあのトリックはとてもノーマルデックで演じることはできないと確信しますが、彼がそのように述べたので、私の思いついたギャフを使うアイデアを書くことにいたしました。

選ばれたカードを返してもらうまえに、デックの下半分を上にまわし、ドリブルオフして上半分のうちの少ないカードの中に返してもらったということから、私はデバイデッドスタックを使っていると推測いたしました。デバイデッドスタックについては、"Card Magic Library"第10巻、90ページに解説されています。

問題は、どのタイプのデバイデッドスタックを使うか、ということです。シュルツ氏が裏面を見てやったかはどうかは定かではありません。もしも裏面を使用していたなら、カードをやや広げて、ちらっとカードの表を相手に見せたとき、選ばれたカードが何枚目にあるか認知したのかもしれません。でもあの瞬時に認知するのは至難の技ですから、おそらくこれは正解ではないと思います。

ここで方法論ではなく、演出に関したことを挿入いたします。シュルツ氏がディールするときに、相手の目を見て、選ばれたカードを持ったときにわかるということに対して、どのように理由づけしていたのか、"Cardician's Journal"No.249を書いたときにはわかりませんでしたが、カードを広げて相手に見せる部分を繰り返し見たところ、広げて見せたとあと、「ビリーブオワノット、ユーソウユアカード」(信じられないかもしれませんが、いまあなたはあなたのカードを見ました)と言っているのを聞き取れました。

すなわち、選ばれたカードが何枚目にあるか相手がわかっているのを前提として、1枚ずつディールしていって、相手の心の動きを察知して当てる、という演出だったのです。

方法論にもどります。裏面を見て識別するのではないとしたら、どうしたら識別することができるでしょうか。それは触覚的な手法を使えばよいのです。そのひとつの方法は、"Card Magic Library"第10巻の8ページの図のうちの、どれかのギャフを含んだデバイデッドスタックを使うやり方です。その図には4種類あり、どれでも使えますが、仕掛がもっとも目立たないのは左から3番目のものです。

そのギャフによって、選ばれたカードの下か上にアルトマントラップと同じブレークを作っておけば、ディールしたときに選ばれたカードが自動的にわかります。

と最初はそのように考えましたが、左から2番目のギャフを使った方が、ブレークすることが省けるだけベターです。たんにディールしていくだけで、そのギャフカードをディールしたとき、自然にわかりますから。左手の指先をデックのサイドに当てておけば、そのカードが取られたとき、接触がないのでわかるのです。

ディールするときにそのギャフを認知することは、いままでの研究の中には見い出せていませんでした。きっとこの手法は、他にも応用がきくポテンシャルを持っていると思います。キーカードに使うだけでも、キーカードの表面も見ず、裏面も見ないで識別できるのですから。これはあのトリックのひとつのやり方を思いついたことよりも、もっと価値のある発見でした。