= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.254

2014年3月14日

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Card Magic Video Lesson 第26回

つぎの動画は、ハリー・ローレインが彼の作品'アウトオブジスユニバース'を演じている ものです。

No.0224 http://www.youtube.com/watch?v=3FfA4IyHiz8

演出は別にして現象を書くとつぎのようになります。

デックを徹底的にシャフルしたあとに、デックを3つのパイルに分け、マジシャンは中央のパイルに赤いカードが何枚含まれているか当てます。それから左右のパイルを表向きに広げると、赤と黒に分離しています。

私はこの演技を見て、なぜローレインはこのマジックの望ましくない実例のビデオを、YouTubeに流したのだろうか、と首をひねりました。望ましくない実例とは、つぎの2つのまずい部分があるからです。

第一に、手伝った客があまりシャフルがうまくなくて、かなりトップとボトム近くに反対の色のカードが入り込んでしまったことです。デックをファンに広げて、位置を入れ替えたのが5枚ありました。あんなに入れ替えたのでは、客にシャフルさせた効果が薄まってしまいます。

そして致命的なのは、赤が10枚あると宣言しておいて、数えたら11枚あったことです。ローレインは、「この程度の間違いはたいしたことありません」と言っています。たいしてことがないのではなくて、失敗したということに他なりません。

ここでこのトリックの根本的問題点について、ひとつの意見を引用しておきましょう。これは2003年にマジックカフェで'アウトオブジスユニバース'が話題になったとき、英国のユーアン・ギンガムが述べたものです。

'アウトオブジスワールド'のバリエーションの中で、'アウトオブジスユニバース'は最悪のバリエーションです。あまりにも多数回にわたるシャフルが行われ、シャフルの繰り返しが演技の主体になっています。そして結果が表現されまでに時間がかかり過ぎます。

それにシャフルだけではありません、客にデックを52枚全部ディールさせるのを3回もやらせるのですよ。そしてその結果表現された結末は、意味のよくわからないことなのです。何ですか。3つのパイルに分けたら、一部は混ざっていて、一部は分かれているなんて。


ローレインの望ましくない実例映像を見たあとだけに、私はこの意見に同調しかかりました。そこでマジックカフェでどんな意見が出たのだろうかと、確認することにいたしました。その中で説得力のあったのが、ダーウィン・オルティズのつぎのような投稿でした。

ユーアン・ギンガムさん、ローレイン氏に代わって意見を述べさせていただきます。それは'アウトオブジスユニバース'を何回も演じてきた経験からの意見としてお聞きください。

あなたはこの作品がポール・カリーの'アウトオブジスワールド'のバリエーションとして、この作品を批判していますが、それは的を得ていません。これは客が赤と黒を分けるという現象ではなく、カードを繰り返し混ぜたあとで、1つのパケットでは赤と黒が同数になり、他の2つのパケットでは赤と黒が分離しているという現象です。カードが混ぜられるという部分は、客が自由にカードを配り分け、さらにマジシャンがよくシャフルするという、2つの行為によって強調されています。その2つの行為がカードを滅茶苦茶に混ぜる目的であるということを、はっきりと表現して演じれば、その行為がおかしいとは感じられないはずです。

そのように演じられた'アウトオブジスユニバース'は、最強のカードマジックのひとつです。私がいままで見たベストの演技は、タマリッツがスペインのテレビ番組で演じたものです。それが観客に大反響を起こしたという事実が、この作品の優秀さを保証していると思います。


この投稿の中で、"客が自由にカードを配り分け、さらにマジシャンがよくシャフルするという、2つの行為によって"と書かれている部分は重要ですが、"あれっローレインは客にシャフルさせていたじゃないか"と思いつきました。

この実例映像の諸悪の根源は、客にシャフルさせたことにあります。あまりにも赤と黒が入り交じってしまったため、ローレインはカードを入れ替えて調整し、それでもその入れ替えを確実にやらなかったため、赤の枚数が1枚多かったのです。

"クロースアップカードマジック"におけるローレインの解説を確認したところ、客にシャフルさせるとはなっていませんでした。マジシャンが細かくシャフルすれば、けしてあのようなまずい結果にはならないのです。私が2回試してみたところ、カードの入れ替えなどまったく必要ないどころか、赤と黒が混ざっている部分は数枚程度でした。

そのように中央部分であまり赤と黒が混ざらない場合をうまく利用することはできないかと考えたとき、ふとウォルター・ギブソンの'ペイオフ('"Card Magic Library"第5巻)を思い出しました。そして思いついたやり方は、私のバリエーションとして書き残したいものとなりました。

インサイドジスユニバース
= 加藤英夫、2013年10月25日 =

方 法

ローレインの原案で最後に客に3つのパイルにディールさせるのを、13枚ずつの4つのパイルにディールさせます。いまあなたから見て、右端のパイルが全部赤で、左端が全部黒となっているとします。そうすると、右から2番目と3番目はどちらも赤と黒が混ざっていることになりますが、あなたのリフルシャフルが細かく精度の高いものであるほど、2番目のパイルの入っている黒は赤よりもずっと少くなっています。3番目のパイルはその反対です。

ところが2番目と3番目のパイルは面白い関係になっています。すなわち、2番目のパイルの黒と3番目の赤の枚数が同じになっているのです。

「これだけカードをよく混ぜたのに、とても不思議なことが起こっています。この中に入っている黒いカードの枚数と、こちらの中に入っている赤いカードの枚数が同じになっているのです」とそれぞれのパイルを指さして言います。

「確認してみましょう」と言って、右から2番目のパイルを取り上げ、表を自分に向けて広げます。そしてその中の黒いカードを抜き出して表向きに前に置き、「黒が○○枚あります」と言います。「残りは赤です」と言って、表向きにそのパイルのあった位置に広げて置きます。3番目のパイルも同様に赤いカードを抜き出して、2番目のパイルの黒と同数であるのを示し、残りのカードを表向きにそのパイルのあった位置に広げて置きます。

両端のパイルを指さして言います。「この中に入っている赤いカードと、こちらの中に入っている黒いカードも同数になっているのですが、それはカードを数えなくても、広げた瞬間にわかります。なぜなら」と言ってセリフを止め、1番目のパイルを表向きに広げ、「こちらは全部赤で」と言って、続けて4番目のパイルを表向きに広げて、「こちらは全部黒になっていますから」と言います。


備 考

2番目と3番目のパイルが赤と黒がかなり混ざっていれば、上記の通りでいいですが、たとえば2番目のパイルに黒が2枚しか入っていない場合には、つぎのようなセリフで演じます。

「あれっ、不思議ですね、あれだけ混ぜたのに黒は2枚しかありませんよ」と言って、2枚の黒を抜き出して置きます。「残りは全部赤です」と言って、赤を広げて表向きに置きます。3番目のパイルを取り上げて、「ということはこちらには赤いカードが2枚あるということです」と言って、2枚の赤を抜き出して置きます。「そして残りは全部黒です」と言って、黒を広げて表向きに置きます。

さて、今回のローレインの良好でない'アウトオブジスユニバース'の映像のおかげで、いちおうバリエーションを作ることができましたが、「この中に入っている黒いカードの枚数と、この中に入っている赤いカードの枚数が同じになっているのです」という見せ方は、ローレインのように3つのパイルに分けても使える、ということも思いつきました。

ローレインのように16枚、20枚、16枚の3つのパイルに分けて、「これだけよく混ぜたのに、不思議なことが起こっています」と言って、中央のパイルを指さして、「この中に入っている赤いカードと、この中に入っている黒いカードの枚数が同じになっているのです」と言って、赤と黒が同数であるのを見せます。

つぎに右端のパイルを指さして、「こちらに入っている赤いカードの枚数と」と言って、左端のパイルを指さして、「こちらに入っている黒いカードの枚数も同じになっています。なぜかと言うと」と言って、右端のパイルを表向きに広げ、「こちらは全部赤で」と言います。左端のパイルを表向きに広げて、「こちらは全部黒ですから」と言って締めくくります。

ということで、ひとつのトリックでも演じ方は色々と考えられるというのを、今日の結論にしておきましょう。ではまた来週。