= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.259

2014年4月18日

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ダブルカットは最悪のコントロールか

マジックカフェにダブルカットについて、つぎのような投稿がありました。

ダブルカットが、カードをコントロール手法として、まったく恐ろしい技法だと感じる方は、私以外にいないでしょうか。あまりにも多くのマジシャンがこの技法を使っています。2回続けてカットするのを一般の人から見たら、デックに戻されたカードがもとの位置の近くに戻されたように見えるのではないでしょうか。もっと有効なコントロール技法があるのに、なぜこの技法を使うのでしょうか。

この質問に対する最初の投稿は、ダブルカット擁護派でした。質問投稿者の考え方は一般の人がするものではなく、一般の人はたんにカードを混ぜたと思うから、この技法は有効だというものです。そのような投稿がいくつかあったあと、つぎのような投稿がありました。

一般の人たちは、あなたがダブルカットをやったとき、何をやったかはわからなくても、何かをやったことははっきりわかります。しかもその行為は、やってはいけないときにやっているのです。カードがデックの中に戻されたら、そのまま何もしなければ、カードはデックの中で行方不明になっているのですから。もっとそれを印象づけるには、相手にカードをシャフルさせることです。しかしそれにはカードをスチールするとか、他の手法を使うという別の問題が出てくることにはなりますが。

ここでジョークの投稿がありました。

ダブルカットよりも悪いやり方があります。それはシングルアンダーカットです。

これをジョークと受け止めるだけではいけません。選ばれたカードをデック中央に返させて、1回カットしてトップに運ぶのがよくないのは、誰が考えてもわかります。だからと言って、2回に分けてカットしたからと言って、カードの位置を変えたという事実は変わりません。違うのは、2回カットすれば、カードを混ぜたという印象を出せるということぐらいです。

ここで私が投稿するとしたら書くであろうことと近い投稿がありました。

ダブルカットがよくないコントロールだと感じるのは、多くのマジシャンがダブルカットを適切に行っていないからです。よくないやり方でやるということのみならず、現象や手順に適合しないところでダブルカットを使っているからです。

ちなみに、ダブルカットが優れた技法であるということを述べている、著名なマジシャンの言葉を引用しておきましょう。"ミリオンダラーカードシークレッツ"(1972年)の中で、フランク・ガルシアがつぎのように書いています。

1940年代の後半に、ダイ・バーノンが'ダブルカット'をマジック界に紹介いたしました。この技法はたいへん価値のあるもので、パスの有用性を実質的にすたれさせてしまったほどです。

パスの有用性うんぬんというのは、あまりにも大胆な話ではありますが、この文章からも、バーノンが"スターズオブマジック"シリーズNo.2(1946年)の'カッティングジエーセズ'でダブルカットを紹介して以降、急速にダブルカットが普及した様子を見てとることができます。

マジックカフェの投稿に戻ります。私はつぎのように投稿いたしました。

ダブルカットを間違って使えば、それはたいへん怪しく見えますが、正しく行えば、それはたんにカードを混ぜている見えるものです。さらにそれを効果的にするには、ダブルカットをやってから、リフルシャフルに続けることです。ダブルカットで動作を終えたとしたら、カットしてカードのカードの位置を入れ替えたことの印象が残りますが、リフルシャフルを行うことによって、そのイメージが弱まります。私はこのようにあとからやる行為によって、まえにやった動作のイメージを弱めることを、アフターカモフラージュと呼んでいます。

この私の投稿を気にいってくれたメンバーが、彼もリフルシャフルに続けていると述べるとともに、つぎの重要な点をつけ加えてくれました。

演じる現象が、"選ばれたカードをデックの中に入れました、それがトップから現れましたと"いうような場合は、ダブルカットは向いていませんが、他のたいていの現象の場合には、この技法はけして効果を減じるものではありません。

これは、"現象や手順に適合しないところでダブルカットを使っているからです"という投稿と同じことを言っています。この投稿者が、中央に入れたカードがトップから現れるような現象には不適切だ、と指摘してくれたおかげで、どのような現象や手順にダブルカットは有用か、ということを考察しおいた方がよいと思いますが、その作業はけっこうたいへんです。

いままで私が解説してきた作品をチェックしてみようかとも思いますが、今回はやめておきます。後日への課題として頭の中に入れておいて、思いつく例が見つかったらメモしていくことにいたします。


最後に一言、"ダブルカットは最悪のコントロールか"という質問に対する私の現在の答はつぎの通りです。

ダブルカットはもともと、コントロール技法ではありません。デックを混ぜたように見せて、たんに1回カットすることと同等のことを行うものです。すなわち、ダブルカットとシングルカットは同じ目的をはたすもので、見かけが違います。

選ばれたカードをコントロールするのは、ダブルカットの使い方の一部でしかありません。そしてコントロールとして使った場合、ヒンズーシャフルコントロールなどと違って、デックの配列をくずさずにコントロールできる技法です。この技法は多くのトリックで有効に使える場面があります。


最後に、ダブルカットの歴史的なことを補足しておきます。今回の調査で見つけたことです。バーノンが"スターズオブマジック"で紹介したのと同じ1946年に発行された、アーサー・バックレイの"カードコントロール"に、ダブルカットのやり方が解説されています。しかもそこには、1回本当のカットを行って間にブレークを保ち、それからダブルカットして、結果としてトップやボトムを保つフォールスカットとしての使い方も解説されています。

参考までに、バックレイの解説における図を見ていただきましょう。バックレイは表向きに持ったデックでやっているのを説明しています。

図1のように左小指でブレークしていて、図2でそれより下でカードを分けて、図3のように分けたカードを上にまわします。図3のあとブレークの下の残りのカードを上にまわすと書かれています。

バーノンが"スターオブマジック"に書いているのと唯一の違いは、右親指の位置です。バーノンはデックの右下コーナー近くに当てる、と書いていますが、バックレイのこの図では、手前エンド中央あたりに当てられています。異なるやり方として区別するような相違点ではありません。

はたしてダブルカットはバーノンが先か、バックレイが先か、また新しい謎を見つけてしまいました。