= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.272

2014年7月11日

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"加藤英夫作品集"からのお奨め作品

引き続き、"加藤英夫作品集"から、お奨めのトリックの現象を紹介させていただきます。(今回は、一部方法についても書いています)。

メモリーオブフォーカード (2002年)

デックを相手にシャフルさせたあと、あなたはカードの順番を記憶すると言って、デックをさっと見渡します。そして相手に10 から40 の間の数を指定させ、紙に書きます。「その枚数目にあるのと同じ数のカードのある位置を書きます」と言って、あなたはあと3 つの数を紙に書きます。

デックを相手にディールさせて、紙に書かれた4 つの数の枚数目のカードを別の位置に置かせます。そのようにして抜き出された4枚を表向きにすると、すべて同じ数のカードです。

忘れた予言 (2002年)

「つぎに予言のマジックをやります」と言ってポケットに手を突っ込み、いかにも予言の紙片を探す演技をします。しかし予言の紙片は見あたりません。「最近物忘れがひどくなって、予言をどこにしまったか忘れてしまいました。しょうがないのでとにかくカードを1 枚抜いてください」と言って、相手に1 枚抜かせます。

相手の抜いたカードをすぐ受け取り、あなたが表をのぞき込み、「あっ予言はここにありました」と言って、そのカードの表を見せます。そこには、"このカードが選ばれる"と書かれています。

ブランクカードに"このカードが選ばれる"と書いたものを用意して、それをクラシックフォースするだけでもできますが、ある仕掛デックを自作して、まったく自由に選ばせて演じる方法が解説されています。クラシックフォースは不要となり、相手にディールさせて好きなところでストップさせ、ストップしたところのカードを選ばれたカードとします。残りのカードを表向きにスプレッドしますが、全部違うカードです。そして上記のような演技で選ばれたカードが予言カードであることを見せることができます。

フィンガーパワー・シングル版 (2003年)

デックをテーブルにリボンスプレッドします。両手を広げてスプレッドの上にしばらく置き、図1、それから勢いよく前方に運びます。すると図2のように4枚のカードが抜き出されます。4枚のAです。

  

図1                     図2
  
カード選別器 (2003年)

このトリックについては、方法の一部を抜粋します。

相手が選んでおぼえカードをデックに戻させ、どこに行ったかわからなくなったように操作したあと、5枚の候補カードを出すと言って、相手のカードを含めて5枚抜き出します。

「この5枚の中にあるはずですが、どのカードであるか確定するには、カード選別器を使います」と言って、カードケースを取り上げます。

「よくカードを混ぜます」と言って、5枚をよく混ぜますが、最終的に選ばれたカードをボトムに運びます。そして5枚をケースの中に、表をフラップをさし込む側に向けて入れ、フラップを閉じるとき、フラップを選ばれたカードとつぎのカードの間にさし込みます。

このあとケースの底を強くたたくと、選ばれたカードがケースからと飛び出すのですが、その通りにやってみてください。たいていうまく飛び出てこないでしょう。作品集には、確実に飛び出すやり方が書かれています。

エリミネーショントゥーザラスト (2006年)

あなたが後ろを向いているとき、相手がカードをディールして好きなところでストップして、ストップしたところのカードを見ておぼえます。残りのカードをテーブルのカードの上に重ねてそろえます。

前に向き直ります。相手にデックを左右2組にディールして分けさせ、あなたは2組のパケットに手をかざし、「こちらにあなたのカードはありません」と言って、一方を捨てます。さらに相手に残りのカードを2組に分けさせ、あなたが一方の組を捨てます。それを1枚のカードが残るまで繰り返します。最後に選ばれたカードが残ります。

HK's ACAAN (2006年)

私は"エニイカードアットエニイナンバー"(ACAAN)が好きではありません。一般の観客にとって、インパクトのある現象だとは思わないからです。それでもなお、いくつかの方法を考案してきました。その中でも、もっとも"ACAAN"の現象を純粋に実現している方法です。現象を忠実に書きます。

ケースに入ったデックを取り出し、それを手に持った状態で、"ACAAN"にまつわる話をします。それから相手に好きなカードと、好きな数を言わせます。

それからあなたはケースのフタを開き、ゆっくりとデックを取り出し、そしてデックをそのまま相手に渡します。デックを取り出してから相手に渡すまで、いっさい怪しい操作をしていません。

そして客が指定された枚数をディールすると、そこから指定されたカードが現れます。

フォーオブサーティンカインヅ (2007年)

デックを表向きにスプレッドして、よく混ざっていることを見せます。それからAからKまでのカードを1枚ずつ使うと言って、デックを両手の間に送りながら、13枚のカードを抜き出してテーブルに置きます。そしてその13枚を表向きに相手に持たせます。

残りの39枚をあなたが持ち、あなたがトップから3枚を裏向きに置いて、その上に相手のパケットの上から、表向きの1枚を置かせます。さらにあなたが裏向きに3枚置き、その上に相手が表向きに1枚のせるというのを、4枚ずつ13組のパイルができるまで繰り返します。

「人間でも似たもの同士が集まるという傾向がありますが、カードの場合には、同じ数のカードが集まるという傾向があります。その結果をお見せします」と言ってから、それぞれのパイルの裏向きの3枚を表向きにすると、それらはすべてその組の表向きのカードの数と同じ数のカードです。そのようにして、すべての組がフォーオブアカインドであることが見せられます。

この作品については、いまのいま、この紹介文を書いている時点で、このトリックをさらにパワーアップするアイデアを思いつきました。それについては、いずれ"Cardician's Journal"のいつかの号で解説したいと思います。

ウイッチドクター (2010年)

選ばれたカードがデックのどこに行ったかわからない状態にされます。そしてデックをリボンスプレッドします。

選ばれたカードが病気の病巣だとして、ウィッチドクター(妖術による医者)が妖術で病巣を取り除くと話をします。そしてスプレッドの上で葉書を左右に動かし、あるところで葉書をスプレッドの上に置きます。

あなたは葉書の下に指先を入れて探りますが、けして葉書の下を見てやるのではありません。そして1枚のカードを抜き出します。それが選ばれたカードなのです。

忘れっぽいエース

私は'ダレイのラストトリック'を原案のままのハンドリングでやることはありません。原案では、ビドルムーブを行ってから、またAを1 枚ずつ見せていますが、その二重の見せ方がくどいと思うからです。

そのへんの変更と、'ダレイのラストトリック'を単純なトランスポジショントリックではなく、最大の効果を生み出す演出を解説いたしました。

ウィルスバスター (2011年)

"Card Magic Library" 第9巻、102 ページに解説の'ウィルス発見' では、ウィルスであるハートのJが上に現れて、いくつの数がポケットに隠されているかを当てて終わっています。そこで終わったのでは、マジックの現象としては終わっていますが、ウィルスに関するストーリーは完結しているとは言えないので、カードの順番がもと通りになって、コンピューターが完全に修復されたというストーリーといたしました。

とても時間のかかるトライアンフ (2013年)

これはまさに加藤タッチの作品です。簡単に説明できますので、本文より引用して方法を紹介することにいたしましょう。

方 法

デックから1枚のカードを相手に抜かせ、おぼえてから返してもらい、トライアンフの操作を行います。裏表混ぜたように見せて、選ばれたカードだけリバース状態とするのです。(私はこの部分を、ストリッパーデックで行います。裏表混ざった状態を見せることが重要だからです)。

「これから起こることは、裏表が混ざったカードの向きがそろってしまい、しかもあなたが選んだカードだけ逆向きになっているという、とても不思議なマジックなのですが、ひとつだけ欠点があります。それは向きがそろうまでにすごく時間がかかるということです。ですからこのカードは使いません」と言って、デックをケースに入れ、左内ポケットに入れる真似をしますが、左袖の中に落とします。

「あらかじめ家を出るまえに裏と表を混ぜたカードを用意しておきましたので、そちらを使うことにします」と言って、左袖からスチールしたデックを右内ポケットから取り出します。

「かなり時間がたっていますから、こちらのカードは向きがそろって、1枚だけ逆向きになっているはずです」と言って、デックをケースから出します。「あなたにカードを広げていただきましょう」と言って、相手にデックを表向きに渡し、両手の間で広げさせます。そして裏向きのカードが出てきたら、それを抜いて裏向きのままテーブルに置かせます。

デックを受け取り、もういちど表向きに広げて、「全部表向きですが、これだけ裏向きです。もしもこれが選ばれたカードだったら成功です。あなたが選んだカードは何でしたか」とたずねます。そしてドラマチックにそのカードを表向きにします。

作品集には書きませんでしたが、つぎのような発展的なバリエーションもあります。あらかじめ左内ポケットにインビジブルデックを入れておきます。上記のように演じたあと、「もう時間がたったので、こちらのカードもそろっているはずです」と言って、相手が選んだカードをリバースして現します。

なお、最初のデックとしてマークドデックを使用すれば、相手が選んだカードの表を見ないで演じられますので、さらに不思議さを強めることができます。

最後に紹介した、'とても時間のかかるトライアンフ'にこそ、私のカードマジックに対する基本戦略を見ていただけると思います。それはマジックの不思議さに演出を加えて、エンタテイメントとして仕上げる、という考え方です。そのコンセプトは、作品集の多くの他の作品にも感じていただけると思います。

この作品集が、たんに私の作品を知っていただくだけではなく、演出の重要性を再確認していただけるものとなることを期待しています。