= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.289

2014年11月7日

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現象を組み合わせる

11月2日、庄司タカヒト師とゆうきとも師の開催された、'新ゆったりとクロースアップ'に参加してきました。とても楽しい会でした。私も15分程度のミニレクチャーをさせていただきました。どのような主旨のレクチャーであったかというと、いくつかのトリックをアクトとしてまとめるときの、ひとつの重要ポイントをお話しすることでした。

最初に演じたカードマジックは、まだ英語名しかつけていませんが、'How To Mix Oil & Water'というものでした。現象を簡単に説明するとつぎのようなものです。

4枚の赤いカードと4枚の黒いカードを見せます。4枚の黒を裏向きでファンに広げ、裏向きの赤を黒の間に交互にさし込み、さし込んだ4枚が半分アップジョグ状態のままでカードを閉じ、そしてアップジョグカードを押し込んでそろえます。魔法をかけてから、上の4枚をファン状に取って表を見せると、それらは4枚の赤です。そして残りの4枚を広げて見せると、4枚の黒です。

もういちど同じことをやると言って、4枚の黒を4枚の赤の間にアップジョグ状態にはさむところまでやって、ここでカードの表面を観客に見せます。アップジョグされたのが黒で、下のが赤であることがはっきり見せられます。そしてカードをそろえます。間違いなく赤と黒は交互に混ぜられました。魔法をかけます。また赤と黒が分離します。

「このようにすぐ分離してしまう赤いカードと黒いカードを混ぜようとしたら、いったいどうしたらよいでしょう」と言って、黒い4枚を見せてそろえ、テーブルに表向きに置きます。そして赤い4枚を見せてそろえ、表向きに4枚の黒の上に重ねます。私は言います。「赤と黒をどうしたら混ぜられるか、それは、、、、魔法をかければよいのです」と言って、かなり時間をかけた魔法のかけ方をします。

8枚を表向きに広げると、赤と黒が交互に混ざっています。


このトリックは、今年の初めからの課題であった、パケットトリック研究の成果の中のいちばんの収穫となった作品です。来年に商品化するかもしれないので、トリックの解説はしませんでした。ここで私はつぎのような話をします。

「私はテンヨーのクリエーターとして、各製品の売れ行き状況を長年にわたって見てまきした。するとよく売れる商品には共通の要素があるのがわかりました。それは、単発現象ではなく、現象が繰り返されたり、違う現象が組み合わされたものがよく売れるということです。たとえば昔なら、'悟空の玉'が長年にわたってベストセラーでした。コップを玉が貫通するという現象が繰り返されるものです。最近では、とは言っても40年ぐらいまえに開発されたものですが、'ダイナミックコイン'がずっとベストセラーを続けてきました。コインが出現、飛行、貫通、消失という現象が連鎖して起こります。現象を重ねることによって、見る人の興味は高まっていき、より不思議になり、より楽しくなるというわけです。'スポンジボール'だってそうです。いくら見事に演じても、手に握ったスポンジボールがただ消えるのを見せただけでは売れません。色々やったあと客の中で4個に増えるから、すごく受けるし、すごく売れるのです」。

「いまお見せしたオイル&ウォーターでも、混ぜたものが分離するのが2回起こり、3回目で混ざらないものをどうしたら混ざるかという話をして、混ざる現象で締めくくっています。このように分離現象を繰り返し見せ、最後に反対の現象を組み合わせているから、全体として演出が構成されるのです。それではもうひとつ、別々に考えられていた、それほどすごくはない2種類の'オイル&ウォーター'を組み合わせるとどうなるか、という例をお見せしましょう」という話をして、つぎのようなトリックの連鎖を演じます。

1組のデックを取り出し、表向きにリボンスプレッドして、カードがよく混ざっていることを見せます。さらにリフルシャフルします。そして赤いカードと黒いカードを3枚ずつ使うと言って、デックを表向きに広げ、赤と黒を交互に抜き出して重ねていきます。そのときデックが赤と黒がまざっているのがよく見えます。

抜き出して赤と黒が交互に混ざった6枚を裏返し、上から2枚取って表を見せます。赤と黒です。その2枚をテーブルに置き、つぎの赤と黒のペアを見せてから、最初に見せた2枚の右隣りに置きます。残りの2枚が赤と黒であるのを見せ、右端に置きます。

ここで私は問いかけます。「このように2枚ずつ置きましたが、赤と黒は混ざっているでしょうか」。客の一人が「混ざっています」と答えます。「マジシャンの常識としては混ざっていると思えますが、1枚の黒の上に1枚の赤がのっていますから、よく考えたら黒と赤は分離しているんです。ではこのようにするとどうでしょう」と言って、私は右のペアを中央のペアの上にのせ、左のペアをさらに上にのせます。「これなら誰が考えても混ざっています」と言います。

「しかし少し時間をおくと、赤と黒は分離します」と言って、6枚が分離したことを見せます。私はたたみかけます。「このように赤黒混ぜたものが、手を触れずにしばらく時間がたつと分離するわけです。もしかすると」と言って、私はわきに置いてあったデックの方に視線を向けます。それを指さして、「こちらのカードは手を触れてからかなり時間がたっていますよね」と言って、デックを取り上げて表向きにリボンスプレッドします。赤と黒が分離しています。「やはり分離してしまいました」と言って締めくくります。

「前半は6枚を使用したささやかな"オイル&ウォーター"で、後半は混ざった赤と黒が瞬間的に分離する単発トリックですが、それを組み合わせることによって、ひとつの演出が構成され、不思議さも面白さもパワーアップした例です」というような話をして、それからこのトリックのやり方を解説いたしました。


というわけで、ゆうきさんにこの会への出席をお誘いいただいたおかげて、以上のようなミニレクチャーをまとめることができました。

いちおううまくいったのですが、私はうまくいこうがよくなかった場合であろうが、いつも自分のやったことの反省会を一人で行います。その結果、重要なことを思いつきました。最初に見せた'How To Mix Oil & Water'では、赤いカードと黒いカードをもっとクリアに見せるやり方、それによって間違いなく赤と黒が混ざったことが強調されます。

もうひとつ、レクチャーとしては前述のように"How To Mix Oil & Water"を先にやる必要がありましたが、ショーで演じる場合には、逆順にした方がよいということです。そうすれば、何度も赤と黒が分離するのを見せ、最後に混ざるという現象で締めくくることができるからです。