= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.291

2014年11月21日

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古きを訪ねて

私はいま、あることの研究をするために、古いマジック雑誌を調べています。ひとつわかった顕著なことは、1900年に入った途端に多くの雑誌が発刊され始めたことです。それはちょうど、"Expert at the Card Talbe"や"Art of Magic"が現れたころのことです。その流れは1910年代になって、チャールス・ジョーダンの作品の噴出とも言える登場と、ジョーダンと一時はともに活動したアンネマンが頭角を現すということにつながっていきます。

そのころのカードマジックを読むと、ときどきはっとさせられることがあります。今回はっとさせられたのは、原理とか手法はまったく巧妙でもなく、面白くもなく、私の頭がさえていなければ、きっと右の目から左の目に通り過ぎていってしまうようなトリックです。

じつを言うと、私はそれを読んだときにつまらないと思って、右から左に通り過ぎていってしまったのです。ですからその出典を思い出そうにも思い出せず、インターネットの宇宙の中に埋もれているそのトリックを、再度見つけることは不可能で、出典も著者も、そして詳しいやり方も思い出すことができません。読んで1日たってから「はっと」したのです。

そのトリックの現象を書きます。おそらくたいていの方は「はっと」しないでしょう。

選ばれたカードがデックに戻され、デックはシャフルされます。選ばれたカードを当てると言って、マジシャンは相手の目を見つめます。「あなたのカードはAですね」と言うと、相手は肯定します。「Aですから、A-C-Eというスペルに合わせてカードを置きます」と言って、3枚のカードを相手の手にディールします。「つぎはマークです」と言ってまた目を見つめます。そして「スペードのAですね」と当てます。「スペードですから、SPADEに合わせてカードを置きます」と言って、8枚のカードを相手の手にディールします」。「そのカードを表向きにしてください」と言って、最後に置かれたカードを相手に表向きにさせます。選ばれたカードが現れます。

もしかしたら、この現象を読んだだけでは、けっこう面白い現象だと感じるかもしれません。しかしながら、そのやり方を読んだらきっとがっかりするに違いありません。そのやり方は、スペードのAをフォースして、それをトップから8枚目にコントロールするのです。

どうです、がっかりしたでしょう。

私が1日たってから「はっと」したのは、読んだときには現象と方法を同時に読み、方法のつまらなさが現象の面白さに気づくのを邪魔していて、1日たったら現象の面白さの記憶だけが残っていたのです。

このトリックには、どうして選ばれたカードがわかったかということと、どうして特定枚数目から出てきたか、という2つの不思議さが組合わせさていて、前者はクラシックフォース、後者はコントロールという技法で実現されています。クラシックフォースは相手に疑問を感じさせるものではありません。よほど下手であれば別ですが、うまく行われるクラシックフォースは、まったく自由に選んだように見えます。

問題は、コントロールのやり方です。書かれていたコントロール方法を記憶していませんが、おぼえていないぐらいですから、たぶんパスか何かでトップにコントロールしたあと、シャフルでトップに7枚を加える、程度のやり方だったと思います。

もしもそうだとしたら、そのコントロールのやり方が、このトリックから最大の不思議さを生み出すことを阻害しているのです。「ああ、あのときカードをあの枚数目に運んだんだな」とか、そこまで具体的な疑いではなくても、「あのとき何かやったな」程度の思いを与える可能性はあるのです。

そこを解決すれば、このトリックは一級のトリックになる、この当て方にはそれだけの良さがある、と「はっと」したきに思いついたのです。

課題が見つかれば、あとは考えれば必ずといってよいほど解答は見つかります。その解答が見つかるまでに、今日は30分もかかってしまいました。なぜなら、いくつものやり方が思いついて、どれがそれらの中のベストか絞り込むまでに時間がかかってしまったのです。いちおう現時点でのベストのやり方を説明いたします。

思えば出てくる
= ?+加藤英夫、2014年11月21日 =

方 法

相手にシャフルさせたデックを受け取り、表が相手に見えるようにさっと広げて「よく混ざっています」と言いますが、カードの表面が45度ぐらいこちらに向いたとき、中央あたりのカードの左手前コーナーを左親指でクリンプします。そしてクリンプカードの左隣りのカードを記憶します。クラブの5だとします。

カードを閉じて裏返します。カードをそろえる動作でクリンプカードの上にブレークを作ります。おぼえたクラブの5の下に作るのです。そして「カードを1枚取ってください」と言って、クラブの5をクラシックフォースします。

相手が取ったカードを見ておぼえている間に、あなたは相手が取ったカードの数とマークのスペル分だけクリンプカードから数えて送り、そこからカードを分けてそこに相手のカードを返させます。ハートの5の場合は、FIVEとCLUBですから、クリンプカードから数えて8枚目の下で分けるのです。

相手が左手の半分の上に相手のカードを返したら、右手のカードをのせてそろえ、デックをテーブルにドリブルオフします。「これであなたのカードがどこに行ったかわからなくなりました。もっとわからなくしましょう」と言って、デックを取り上げ、手元を見ないで何回かカットします。このとき大切なのは、デックの方に視線を向けていないということです。そして最後のカットのときに視線をデックに向けて、クリンプカードの下でカットします。

あとは原案と同じです。でもただ相手の目を見つめるだけでなく、「まずあなたのカードの数だけ念じてください」というように、思わせて、見つめて、そしてそれを当てるとした方がよいでしょう。