= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.293

2014年12月5日

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古きを訪ねて・第3弾!


チャーリエのことを調べていて、"Charlie"で検索をかけたところ、スタニオンがチャーリエパスのひとつのやり方として、面白いやり方を書いているのを見つけました。つぎのように書かれています。

チャーリエパスのひとつのやり方です。デックを左手の親指と他の指の先に両側から持っていて、右手に選ばれたカードを持っています。左親指をゆるめて、下半分を手の平に落とします。分かれ目に右手のカードを入れたらすぐ、左人さし指で下半分を押し上げて、もとの上半分を落とし、その上にもとの下半分を落としてそろえます。

スタニオンの解説はそれだけですが、パスを行うのは、右手がカードを割れ目に入れて、まだデックの前にあるときに行うということです。それによって上下のパケットが入れ替わるのが右手によってカバーされます。

「これはすごいな」と思って、いざ鏡の前で練習してみると、どうしても下から上がってくる下半分の裏面が左側の客に丸見えになってしまいます。では右側の客に対しては効果があるかと言えば、右手のカードを割れ目に入れるところがはっきり見えないので、何をやっているのかわからないということになります。効果を発揮するのは、正面にいる観客ごく一部ということで、使えるやり方ではないと結論しました。

技法そのものの収穫はなくとも、このやり方の根底にあるセオリーが、私にはとてつもない収穫となりました。このやり方では、秘密の動作を隠すのに、同時に別の動作を行っています。秘密の動作を別の動作でカバーするという理論は、いまではマジシャンの常識です。しかしながら、カバーするための動作にナチュラルさの度合いがある、ということに今回気づかされたのです。

リフルパスというのがあります。左手の動作をカバーするために、右手でデックをリフルします。そのリフルというカバー動作のナチュラルさの度合いはどの程度でしょう。もしも何の理由もなしにリフルしたら、ナチュラルさは低いですが、魔法をかけるという意味でリフルするとしたら、ナチュラルさは向上します。

しかし魔法をかけるためにリフルするというのは、取ってつけたような動作です。必ずしも必然的な動作ではありません。

スタニオンの上記のやり方に見える素晴らしい点は、右手がカードをデックの中に入れるという、流れとして必然的な動作がカバーの手段になっている点です。取ってつけた動作ではありません。カバーのための動作にもナチュラルさの度合いがあるということは、そういうことです。それをスタニオンは気づかせてくれました。

そこまで考えてふと思い出しました。デックの表面を観客の方に向けて垂直に持ち、そのときすでにパスする部分に左小指を入れていて、右手もパスしやすいようにデックにかけているとします。そこから両手を下げてデックを水平にする間にパスすると、パスの動作は感知しにくいものとなります。そのことを利用して、私はつぎのようなパスのやり方を、はるか昔に考えていました。たぶん誰かがどこかに書いているだろうと思って、いままでどこにも書きませんでした。

アフタースプレッドパス
= 加藤英夫、考案日不明 =

デックを両手の間に広げて、相手に1枚指ささせます。指さされたカードの左で分けて、右手を上げて指さされたカードの表面を相手に向けますが、左手のカードも立てるようにします。相手がカードをおぼえたら、カードを立てたまま、右手のカードを左手のカードの手前にそろえますが、選ばれたカードの上(手前)にブレークを作ります。右手を上にかけ直してパスの体勢をとります。そして両手を下げながらパスを行います。

このやり方でちょっと問題なのが、スプレッドを閉じたあと、右手をかけ直す動作です。デックを垂直から水平に戻すまえに、その動作を行うことには怪しさがあります。

そこに今回スタニオンのやり方から学んだセオリーを取り入れるのです。パスを行うまえに、右手がデックの上エンドかかっているのがナチュラルに見えるにはどうしたらよいでしょう。そう考えてつぎのやり方を考案いたしました。

プッシュインパ
= 加藤英夫、2014年12月4日 =

デックを両手の間に広げて、相手に1枚指ささせます。指さされたカードをアップジョグします。アップと言ってもこの段階ではカードは水平に持たれています。スプレッドを閉じますが、アップジョグカードよりも上にブレークを作ります。

左手を上げて表面を相手に向けますが、そのとき左手はパスがすぐできる持ち方にずらします。デックを指先に持つようにするのです。同時に左小指をブレークに深く入れます。

相手がアップジョグカードをおぼえたら、右手でアップジョグカードを中に押し込みます。押し込み終わったときにパスをやるための右手の位置になるようにするのです。

そして両手を下げながらパスを行います。


というわけで、"古きを訪ねて新しきを知る"の第3弾は、かなり有意義な成果を得たようです。