= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.294

2014年12月12日

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マーチン・ガードナーと高木重郎との接点を発見!

'天海リヴォルブ'という技法があります。デックを中央で分け、右手の半分と左手の半分を同時に180度返してから重ねる、というやり方です。いかにも2つのパケットが裏向きと表向きで重ねられたように見えて、じつは向きが変わっていない、という技法です。この技法については、'天海オプティカルリヴォルブ'というのが正式名称かもしれませんが、'天海リバース'、'天海ターンオーバー'など、様々な呼び方があります。ここでは、'天海リヴォルブ'と呼ぶことにします。

'天海リヴォルブ'のことを調べていたら、1941年にマーチン・カードナーが書いた"Twelve Tricks with Borrowed Deck"の中に、天海リヴォルブを使用した'Face To Face Fantasy'というトリックが解説されていました。これは"ターベルコースインマジック第1巻"に解説された、石田天海の'天海リバースカードミステリー'を土台にしたバリエーションです。

天海の原案では、たんに裏向きと表向きで重ねたカードが、向きがそろってしまうという現象ですが、ガードナーのバリエーションでは、全体が向きがそろってしまい、なおかつ選ばれたカードだけがひっくり返っているという、'トライアンフ'的な現象となっています。

'天海リヴォルブ'を使うトリックでは、たいていボトムカードを最初にリバースしておく必要があります。'天海リバースカードミステリー'では、"最初に密かにボトムカードをリバースしておきます"、と書かれていますが、ガードナーのトリックでは、その部分を演技的に解決しています。

まずその作品を説明しますが、やり方は原著の説明に忠実に、文章は私の書き方で説明します。原著では'天海リヴォルブ'という呼称は使われていません。

フェーストゥーフェースファンタジー
= マーチン・カードナー、"Twelve Tricks with Borrowd Deck"、1941年

方 法

ボトムに2枚の選ばれたカードをコントロールして、それら2枚を動かさないようにデックをリフルシャフルしたあと、デックを両手の間に広げて、すべてのカードの向きがそろっていることを示します。カードをそろえながら、ボトム2枚の上にブレークを作り、右親指で保持します。

「初めにカードを半分に分けて」と言いながら、スウィングカットして上半分を左手に渡します。「半分を表向きにして」と言いながら、左手の半分を表向きに返します。「両方を重ねます」と言いながら、右手のパケットを左手の半分に重ねますが、すぐブレークの下の2枚を左手のパケットの上に残し、ここで天海オプティカルリヴェルブを行います。(原著では天海リヴォルブとは書いていせん)。

天海リヴォルブはつぎのようにやります。両手を同時に右に返して、両方のパケットを180度ひっくり返すのです。ひっくり返し終わったとき、左手のパケットを右手のパケットの上に重ねますが、右手のパケットを4cmほど右にずらした位置に重ねます。(原著ではもっと詳しく書いていますが、天海リヴォルブを知っていることを前提に、簡略に書きました)。

右手で両方のパケットが重なっているところをつかんで取り、左手の平が上に向くように返し、表向きの方のバケットが上になるように左手に持ち直します。

「このあとこのようにカードをそろえて」と言いますが、ここではカードをそろえず、右手でずれているカードをそろえる真似だけをします。「そして魔法をかけると」と言って、右手で魔法をかける真似をします。「そうすると、全部のカードの向きがそろってしまうのです」と言って、上に突き出ている表向きのパケットを裏向きに返して、裏向きのパケットの上に重ねてそろえます。

「いまはカードの向きはそろっています」と言って、デックを両手の間に広げて見せ、そろえます。「ではカードの向きを半分逆向きにします」と言って、デックを半分に分けて、ここで本来の天海リヴォルブを行います。それからまえと同じように左手に持ち直します。「このようにカードをそろえて」と言いながらカードをそろえ、「魔法をかけます」と言って魔法をかけます。

いちばん上の1枚を取り、「こちらのカードも裏が上を向いていますし」と言います。そのカードをデックの中央に入れます。「全体をひっくり返すと」と言って、デックをひっくり返し、いちばん上の1枚を右手で取り、こちらのカードも裏が上をむいています」と言います。右手のカードをデックの中央に入れます。

「魔法をかけます。これでカードはそろいました。ところであなたが選んだカードは何でしたか」と、2人目の客が選んだカードをたずねます。それからデックを両手の間に広げ、全体がそろっていて、中央に2人目の客のカードが表向きになっているのを見せ、そのカードを抜き出します。

現在ボトムに1人目の客のカードがリバースしています。そのカードを利用して、また天海リヴォルブを行い、最初と同じプロセスによって、1人目の客のカードを現します。


これからやることを説明しながら、1回天海リバースをやっていますが、そのとき右手のボトムカードを左手のパケットに落としてからやっています。この部分が、"The Amazing Miracles of Shigeo Takagi"の中で解説されている、高木重郎の'トータルトライアンフ'で使われている技法にそっくりなのです。ガードナーは左手のパケットを180度だけ返していますが、高木氏はそこでパドルムーブのように360度回転させています。

もしかすると、ガードナーのやり方を読み、そのやり方に触発されて高木氏のやり方が生まれたのかもしれません。いずれにしても、高木氏の発見は、準備段階のリバースを割愛できるという、画期的なものでした。

ただし、やり方がよくありませんでした。上記のガードナーのやり方でもそうですが、左手に分けたカードを左手で表向きにしてしまうから、そのあと右手のパケットを左手のパケットに重ねることが不自然になってしまうのです。

その部分については手前味噌になりますが、"Card MagicLibrary" 第8巻、85ページに解説した、私のやり方の方がうまくいきます。

いずれにしても自分の考えたことが、歴史をたどっていくにしたがって、高木重郎、マーチン・ガードナー、そして天海へとたどりつくという、時空的なつながりを感じられるということは、歴史の一部に参加できた感じがして、クリエーターとして心地よいものです。