= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.306

2015年3月6日

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奇妙なマジックが発端

ピーター・ダフィ著の"Card Magic USA"において、いちばん最初に解説されている、ジョン・アームストロングの'My Opening Act'は、つぎのようなマジックです。

よくシャフルされたデックに、客に輪ゴムを縦横二重にかけさせます。そのデックを持ち、スペクテイターズピークで相手にカードをおぼえさせます。スペクテイターズピークには二種類のやり方があって、相手にカードを押させるやり方と、マジシャンがリフルしてストップをかけさせるやり方です。アームストロングは、後者を使うとのことです。

相手が見たカードの下にブレークを作り、デックを右に返して表を手前に向けるときに左小指でブレークより上のカードを押してやると、相手のカードをグリンプスすることができます。力をゆるめると、輪ゴムによってずれがもとに戻り、カードはそろいます。

カードを選んだのと違う客にデックを見つめて精神集中させ、最初の客が見たカードを当てさせます。しかし第2の客の言ったカードは第1の客がおぼえたカードではありません。マジシャンはデックから輪ゴムを外し、表を自分に向けて広げ、第1の客のカードを抜き出して当てます。

第1の客のカードを探すとき、第2の客が言ったカードを密かにラッピングしておきます。そのカードをパームして、内ポケットに手を入れ、ウォレットにそのカードをロードして、ウォレットを取り出し、第2の客の言ったカードを現します。


これを読んで、色々な種類の"?"が頭の中に浮かびました。

1.デックに輪ゴムをかけてスペクテイターズピークすることが、それを行うという異様さを上回るメリットがあるのだろうか。

2.輪ゴムでカードがそろうことが、手でそろえることより何が勝るのだろうか。

3.第2の客に第1の客のカードを当てさせるが当てられないというのが、起承転結の脈略の中でどんな働きをするのだろうか。

4.当てようとして間違って言ったカードが、ウォレットの中から出てくるということを、観客はどのように受け止めたらよいのだろうか。


以上のような異様さに対して、演出的な意味づけはされていません。最後にウォレットからカードを現すときのセリフは、「精神集中してあなたはうまく当てましたよ、封筒の中のカードを」と言えと書かれています。

このトリックを読んで、私は頭が朦朧としてしまいました。このような支離滅裂なマジックが世の中にあったということに打ちのめされてしまいました。それともこの作品を受け止められない私の方がおかしいのでしょうか。もしかしたらそうかもしれません。

私はベッドの中でこの作品を読んだので、がっかりしてその本をそれ以上読む気が萎えてしまい、本を脇に置いて眠ることにしました。しかし、読んだ異様なマジックが私を寝かせてくれませんでした。私の頭は活動を開始しました。

そのあと私の頭がどんなことを考えたかは、次回以降にお話しいたします。