= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.308

2015年3月20日

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当てて終わるトリックへの不満から

先週解説した'クイーンは語る'では、相手が選んだカードをクイーンから教えてもらって当てる、という現象でした。その演出はそれで成立しているのですが、"選ばれたカードを言って当てる"というタイプのトリックには、根本的な弱さがあります。とくに一人ではなく、多くの観客に対して演じているときは、言って当てるよりも、選ばれたカードをリビール(現すこと)して締めくくる方がインパクトが強くなります。

そこで私は考えました。デックの中に残っているコインを利用するのです。クイーンから教えてもらって選ばれたカードを言って当てる時点では、デックをテーブルに置いておきます。コインがブレークを保つ働きをします。

デックを取り上げて、少し右に傾けて左手に渡してやりながら、コインで分かれているところをブレークに替えようとすると、コインが左指先の中に落ちてきます。それを受け止めてコインをデックの下に持ちます。

以上でコインをデックからどけて、選ばれたカードの下にブレークを作ることができました。ですから、ここから先は色々なリビールの手法が使えます。たとえば、右手でテーブル上にあるコインを取り、「このクイーンは不思議な魔力を持っています」と言って、デックに対してコインで魔法をかけ、"Card Magic Magazine",30号、22ページに解説された'インプロンプチュホーンテッドデック'を行って、デックを中央でずらし、選ばれたカードを現すことができます。

それでもいちおう辻褄は合います。しかしながら、前半はクイーンが選ばれたカードを見て、それを教えてもらって当てるという筋書きで、後半はいくらクイーンのついたコインで魔法をかけると言っても、マジシャンのテクニックでデックをずらすという、あきらかにテクニカルなマジックになってしまいます。

後半もクイーンの存在を生かしたものにすれば、トリックはより味わいのはっきりしたものになるに違いありません。そこでつぎのような続け方を考えました。

クイーンはさらに語る
= 加藤英夫、2015年2月15日 =

先週解説した'クイーンは語る'の通りにやって選ばれたカードを当てたあと、コインもデックもテーブルに置きます。

それから「あれっクイーンがまだ何か言ってますよ」と言って、コインを取って耳に近づけ、"カードを広げて表を私に見せなさい"と言ってますよ」と言います。

デックを取り上げ、「では私はカードの方を見ないで、クイーンに見せます」と言いますが、それまでにはさまっているコインをスチールしておきます。コインのあったところをブレークで保持します。

顔を横に向けてカードを広げていき、ブレークの上の選ばれたカードのところまできたら、「あっ、クイーンが"それだ!"と言いました」と言って、選ばれたカードの前後をよく広げて、クイーンに近づけ、選ばれたカードをアップジョグします。

それから顔をカードの方に戻し、アップジョグカードを右手に抜き取り、表を手前に向けてのぞき、「たしかに○○の××です」と選ばれたカードの名前を言って、そのカードの表を観客に見せて終わります。

というわけで、いちおう形としてまとまったので、この日の考えはここまでとして、眠ることにしました。

つぎの日以降、この続きを考えて、もっとすごいカードトリックを生み出せることは、まだわかっていませんでした。