= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.309

2015年3月27日

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思考がワープするとき

デックの中にコインをはさむということで考えてきましたが、それはコインによってデックに割れ目を作る、割れ目を維持する、という機能を利用することでした。そのようなことを実際にコインとデックでトライしていたとき、それとは異なる機能があることを見つけました。これもまた'道具が教えてくれる'ことであり、けして頭の中で考えていても見つけられるものではありません。

コインをデックの中にはさむと、コインより上の上半分が滑りやすくなるのです。つぎのような実験をしてみてください。コインをデックの中央の右寄りの部分にはさみます。デックをほんの少し右に傾けてディーリングポジションに持ちますが、中指や薬指を軽く曲げてコインが落ちないようにします。角度はせいぜい5度~10度程度です。

右手でデックに魔法をかけ、左手の指を伸ばします。するとコインが滑り、その結果上半分が右にずれます。そのときコインは右にずれて手の中に落ちてきます。はい、これでひとつのリビレーション手法が見つかりました。

とは言うものの、コインをその状態にはさむこともたいへんですし、はさむためのたいへんなプロセスを経て得る現象としては、それほどたいしたものではありません。もしもコインをシンプルにはさむ手法があれば、何とかトリックとして記録に残すに値するかもしれません。

コインをはさむのが困難なら、カードにくっつけてしまったらどうか、と私は考えました。コインにダブルテープを貼っておけば、カードマジックを演技中にいつでもパームしているコインをボトムカードにくっつけることができます。そうすればあとは選ばれたカードをコインつきカードの下に位置させればOKです。たとえばボトムにコインつきカードがあって、ヒンズーシャフルして相手にストップをかけさせ、左手のトップカードを見ておぼえさせ、その上に右手のカードをシャフルするときにコインつきカードを選ばれたカードの上に落とせばよいのです。

家にダブルテープがなかったので、ダブルテープを買うことにしました。すると私が知らなかったタイプのダブルテープが売られていました。物に貼ると透明になってしまうテープです。いままでのダブルテープでは、カード面に貼ると、貼ってあることが見えてしまいます。しかしこれは貼った面を見せても、貼ってあることを知っていなければまず認知できません。

「これは使えるぞ」ということで、喜びいさんで買って帰り、すぐにカードに貼ってみました。もうこの時点では、コインをカードに貼ることはそっちのけです。ですからコインをデックにはさむという話はもう続きはありません。このようにマジックのクリエーションにおいては、ひとつのことにこだわり続けることも大切ですが、あるときはすっぱりと切り捨てることも大切であるのです。

たいていの場合、思考が垂直的な線のつながりで進行して見つけたアイデアよりも、水平的に飛んで見つけたアイデアの方が優れているものです。

ダブルテープを貼ることでどのようなことができるのか、それは次週以降のお楽しみということにいたしましょう。