= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.315

2015年5月8日

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妻の一言

今回、パケットトリックを撮影する作業において、客の役をやってくれた妻の発言から、色々と重要なことを学びました。

彼女はいくつかのトリックを演じたとき、色々なタイプの意見を言ってくれました。つぎのようなものです。

「何やってるかよくわからないわ」
「そうなるようになってるのね」
「なんでそのようなやり方をするのかしら」


そしてあげくの果ては、

「不思議だけど面白くないわね」

これらの感想は、トリックが面白いと自信を持って演じた私にとっては、つらい感想であると同時に、考案者には気づかない点を指摘していることもあり、またマジシャンなら喜んでくれるかもしれないが、マジシャンでない人には理解しにくいとか、面白味を感じないものがある、ということを気づかせてくれる感想でもありました。

私は謙虚に意見を熟考し、修正しても改善しなかったものは脱落させました。かくして50種類ほどあった候補パケットトリックから、10種類を捨て去ることになりました。

今日は彼女の言ったことの中で、「なんでそのようなやり方をするのかしら」ということについてお話しいたします。つぎのようなトリックを演じたときのことです。

12枚のカードをさっと表向きに広げて見せたあと、裏向きにして何回かカットします。そして6枚ずつに分けて、2組のパイルを妻の前に置いて、私は後ろ向きになります。

妻は好きな方のパイルから1枚取って自分の前に置き、もう1枚を好きな方のパイルから取って、最初に置いたカードの上にぴったりそろえて重ねて置きます。そのように好きなパイルから取ってペアを作るというのを続けて、6組のペアを作り、彼女の前に左から右に一列に並べさせます。

ここで私は前に向き直り、1番目のペアを指さして、「これはダイヤのAとハートの9です」と宣言してから、2枚を表向きに返して当たっているのを見せます。そのようにしてすべてのペアを当てていきます。


カードはマークドカードを使います。上のカードはマークでわかりますが、下のカードは当然ながら、マークを見ることはできません。

ですから、上のカードを当てるのはたいしたことなくても、下のカードまで当てられるのはすごいだろうと、考案者としては思っていたのです。そこに妻の一言です。

「なんでそのようなやり方をするのかしら。1枚ずつ並べさせて当てた方がいいんじゃないの」。

こう言われたら頭の中で「ギャイーン」という音が響きます。

でもたしかにそうです。マークドカードの存在を知られなければ、下のカードを当てることと上のカードを当てることが同等のものと感じられるのは当然です。ですから2枚ずつ重ねて置くことが、奇妙な感じがするのです。

一言で言えば、このトリックはマジシャンには面白いかもしれないが、そうでない人には変なトリックでしかないものだったのです。

というわけで、このトリックは没になりましたが、原理としてはオリジナリティがあって捨てるのはもったいないので、何とか少しでも改良して今週の記事に使おうと思い立ちました。そのように決意したために、やはり考えればアイデアというものは見つかるものです。2枚のカードを重ねて置かせることがおかしくないやり方を思いついたのです。

2枚重ねて置かせるのですが、1枚目は表向きに置かせて、「つぎは好きな方から取って裏向きに1枚目の上に重ねて、表向きのカードを隠してください」と言って、2枚目は裏向きに表向きの1枚目の上に置かせるのです。そのようにして6組を作らせます。そしてカードを透視して、下のカードが何であるかを宣言してから、上のカードをどけて下のカードを見せます。つぎつぎと当てていきます。

2枚を重ねることに、下のカードを隠すという、正当な理由がつけられました。しかもこのやり方なら、カードの名前を言ってから上のカードをどけて、そのカードを現せることになり、よりビジュアルなインパクトがあるのです。

ということで、いちおうまえよりは改善されましたが、それでもパケットトリックとして商品にする気は起きません。どけた6枚の裏向きのカードをそのままにして終わるのは、どうにも締まりがないからです。

このトリックの秘密は、マークカードを使うという以外に、2つのパイルはどちらもサイ・ステビンススタック(もしくはメモライズドスタック)になっているということです。そうすると、1組目の上のカードがマークでわかれば、その下のカードもわかるのです。それら2枚がわかり、しかも2組目の上のカードがわかれば、2組目の下のカードもわかるのです。

どのようにして判断するかは、あなたに考えていただきましょう。