= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.316

2015年5月15日

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要素を単純化する

オズボーンのチェックリストの6番目に、"代用"というのがあります。マジックで言えば、使う素材や要素を差し替えるということです。

先週取り上げたトリックは、2枚重ねられたうちの下のカードを当てるというものでした。"カードを当てる"ということを、"色を当てる"ということに置き換えることを考えてみましょう。これは厳密に言えば、代用するとか差し替えるというよりも、素材や要素を単純化する、簡略化するという手法に該当します。

カードの裏面には、カードの数とマーク(スート)がわかるマークをつけるのではなく、赤か黒がわかるマークをつけたものを使います。そして赤と黒を交互セットにしておきます。

そのようなカードを何回かカットしたあと、上から6枚を順が変わらないように取って、2組を並べて置きます。そして後ろ向きになり、相手に6組のペアを作らせます。前に向き直り、最初のペアから上のカードのマークを見ると、それが赤黒、黒赤、赤赤、黒黒のどれであるかわかりますから、つぎつぎと当てていきます。

というトリックは、"Card Magic Library"第5巻、49ページに'男と女'と題して解説いたしました。

今回考えたのは、赤黒交互セットにしたカードを、トップに違う色がくるように分けて、同様なペアの作り方をさせると、必ず赤と黒がペアになります。そのことをうまく利用したトリックです。

各組を見つめて、「下のカードは赤(黒)です」と言って、つぎつぎと当てて上の裏向きのカードをどけていきます。マークを見て上のカードの色を認知して、その反対の色を言えばよいのです。

このように演じることは、先週書いたやり方をダウングレードしたことになります。マークと数を当てるのではなく、色だけを当てることにしたわけですから。

色だけを当てるのですから、不思議さもダウングレードしたかもしれません。しかしながら、ダウングレードしたからこそ改良の道が開けるということもあるです。それはつぎのような第2段を演じられることにつながったのです。こうなるとトリックとしてのレベルが作品として残すレベルになったような予感がします。あくまでも予感です。まだ誰にも見せてないですから。ということで作品として記録しておきます。

赤と黒のラプソディ
= 加藤英夫、2015年5月2日 =

色だけを当てるのですから、6組だけではさみしいので、7組のペアで演じることにします。7枚の赤と7枚の黒を交互セットしたものを使います。

最初にさり気なく表を広げて見せたあと、裏向きにしてチャーリエシャフルします。

前述したように、相手にペアにさせてから、下のカードの色を当てます。上の裏向きのカードをどけたり取り上げたりせず、たんに手前に半分ぐらいずらして下のカードが見えるようにします。

第2段です。

そのように6枚の色を当てたあと、ずらした裏向きのカードをもとのように下のカードの上にそろえます。そして言います。「私が後ろを向いたら、どれでもいいですから3つの組をひっくり返してください。そのあと、何回か位置を交換してください」。このセリフは、その動作を手真似しながら言います。

後ろ向きになり、指示したことをやらせます。「下のカードが見えないようにそろえてくださいね」とも言います。そのあと前に向き直ります。どの組がひっくり返されようとも、どの組とどの組が交換されようとも、下のカードの色は上のカードのマークでわかりますから、まえと同じように透視する演技で、下のカードの色を当てていきます。こんどはずらすのではなく、裏向きのカードを取って左手の上に重ねていきます。左から右に向かって取ります。

そして第3段です。

裏向きに持っているカードを右手のビドルポジションに持ち、左手でボトムカードを指さして、「いちばん下のカードは裏も表も見えていません。いまから下から順番に色を当てていきます」と言います。

右手でカードをおでこに当てて透視の演技のあと、「これは○○の××です」と言ってボトムカードの色を当てます。えっ、どうやって当てるかですって。テーブルに表向きになっているカードを見ればわかるじゃないですか。

1枚目を当てたら、それを表向きに右端のカードの上に表向きに置きます。つぎのカードの色を当てて、そのカードを右から2番目のカードの上に置きます。以下同様です。

備 考

第3段を上記のようにやる代わりに、つぎのようにやってみるのはどうでしょう。

第2段を終わったあと、「こんどは私がカードの入れ替えとひっくり返しをやります」と言って、適当に入れ替えてから、全部の組が下が赤になるようにひっくり返します。

「最後は赤と黒を当てるのではなく、ものすごく不思議な結末をご覧にいれます」と言って、カードに対して魔法をかけます。それから左から右に向かって裏向きのカードをどけて、左手に重ね取っていきます。7枚の赤いカードが現れました。

「残りは全部黒いカードです」と言って、黒いカードを表向きにして赤いカードよりも前にばらばらと広げて落とします。


「そのようにしたら種明かしになるのではないか」と思うでしょう。私もそう思います。ですがそのような想像でマジックの善し悪しを決めてはいけません。

相手はカードにマークがあることを知っているわけではありません。赤と黒がペアになっていたことを知っているわけでもありません。

ですからもしかすると、もしかでしかありませんが、この終わり方はものすごいものであるかもしれません。それはいま考えてもしかたがありません。何人かの人に演じて見せれば、すぐにグッド、ノーグッドの結論が出せると思います。

このように、本当に使えるものかどうか自信のないものを解説したことには、明確な意図があります。

それは考案している最中に善し悪しの結論を出さない方がよい場合があるということです。そしてつねに人に演じて見せて、善し悪しをその人たちに決めてもらうというスタンスをクリエーターは取るべきである、というのが今週の私の主張したいことです。