= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.318

2015年5月29日

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アイデアの拡散と合流

前号において、'整列'に演出を加えた改良版の現象を書きましたが、もうひとつの演出を思いつきました。これも作品として記録する価値があると思います。やはり現象だけ書きます。

あなたが綴るメッセージ
= 加藤英夫、2015年5月4日 =

あなたは何枚かのカードのそれぞれに、文字が書かれているのを見せます。それからカードを3つの山に配り、'整列'と同じやり方で、相手が指さした順番にカードを集めていきます。そしてカードを順番に表向きにして置いていくと、「誕生日おめでとうノリコさん」というようなメッセージが現れます。

メッセージはどんなものでもよいですし、あまり少なくなければ何文字でもいいわけですから、様々な場面で利用することができます。

これはAからKまでをただ整列させる'整列'を、ただカードから文字に置き換えただけですが、'ウィルス駆除システム'のようなたとえ話をしなくても、最後のメッセージを現すこと自体が演出になります。

さて、メッセージを現すトリックを考えたおかげで、"Card Magic Library"第10巻の最後に収録した、'誕生日おめでとう'を思い出しました。つぎのような現象でした。

文字が1文字ずつ書かれた8枚のカードを見せてから、テーブルにばらばらに置き、相手が指示した順番で8枚を集めます。集めたあと、テーブルに一列に並べます。表向きにすると、「誕生日おめでとう」のメッセージが現れます。

'あなたが綴るメッセージ'に似ていますが、原理がまったく違います。

面白いことにこの原稿を書きながら、本当に今の今、2つの原理を組み合わせることを思いつきました。現象はつぎのようになります。

フリーメッセージ
= 加藤英夫、2015年5月4日 =

13枚のカードを表向きに広げてよく混ざっていることを見せます。それからカードを3組に分け、相手の指さした順でカードを集めていきますが、指さされたカードを左手のカードの下に入れるのではなく、上に置いていきます。この点が'整列'とは根本的に違います。ただし集めたあとに、カードを2回カットする必要があります。そして13枚を表向きにスプレッドすると、AからKまでが整列しています。

カードの枚数は何枚でもかまいません。枚数が多い場合は、4組に分けてやるとよいでしょう。

今週はただ思いついたアイデアを2つ書いただけですが、結果としては、クリエーションにおける思考プロセスのタイプの一例を見ていただいたことになります。

話は'整列'を二川さんに見せてもらったことから始まり、それに演出を加えた'ウィスル駆除システム'、そして'あなたが綴るメーセージ'へと考えが拡散してしいき、最後にいままでにあったものと合流いたしました。

何となく私の頭は、その流れの先に進みたがっている感じがしますが、記事としてはこのあたりで止めておくのが適切だろうということで、締めくくります。


以上を書いていったんセーブして、つぎの日になりました。朝起きるとたいていの場合、まえの日に考えたことや書いたことを思い出して、それらのことについて頭が回転を始めます。

今回は、'フリーメッセージ'において、カードを集めたあと、2回続けてカットすることがよくないと思い、解決策はないかと考えたのです。普通に2回カットするなら問題はないのですが、1回目は縦にカードをカットして、2回目は横にカードをカットするのがまずいのです。そこでつぎのようにしたらどうかと思いました。

1回目のカットは、カードを集めたあと、縦方向にカードを抜いてテーブルに置き、残りのカードを右手でテーブルのカードの上に重ねます。普通のテーブルカットに見えますから、おかしくありません。なおこのカットを行うとき、「これでカードの順番はどうなっているかわかりません」というようなセリフを言いながらやります。

「いまからあなたに伝えたい言葉を、このカードを使って現します」というようなセリフを言いながら、カードを取り上げ、右手のビドルポジションに持ちます。横方向に抜きやすいように右サイド上下ぎりぎりを持ちます。

そして左サイド上下を左手で持ち、左右に分けますが、右手のパケットをやや上に運び、左手のパケットをそのまま下げてテーブルに置きます。視線は右手のパケットを追います。そして「まずこちらの半分を表向きにします」と言います。


すなわち、カットしてカードを分けることを、つぎの動作のために必要な行為として、堂々とやってしまうのです。

そしてそのパケットを左手に持ち、表向きに並べていきます。たとえばそれらのパケットで、「誕生日おめでとう」まで現してから、残りのパケットを取り上げ、「ノリコさん」を別の列として並べます。


というわけで、続けて行うと怪しく見える動作も、分割して行うことによって怪しさを低減させることができることがあるということです。

目覚めのアイデアとしては、かなり有意義な発見でした。