= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.320

2015年6月12日

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自分の目線から判断できない技法

"天海奇術講座"で'天海リヴォルブ'について書きました。私はこの技法の研究をさらに進めていますが、自分の目線から動作を見ても、技法として成立するかどうか判断できないものがある、ということに遭遇いたしました。

'天海リヴォルブ'のたいていの使い方は、裏向きのデックのボトムカードをひっくり返しておくところから始まります。ですからリヴォルブしたあと、左手のパケットは裏向き、右手のパケットは表向きになります。

ところがジョン・バノンの'ラストマンスタンディング'においては、裏向きのデックの中央に表向きのカードがあり、右手はその表向きのカードの下からカットしてリヴォルブを行います。ですから左手のパケットが表向きになり、右手のパケットが裏向きになります。

そのやり方を読んで、"それはないんじゃないの"と思いました。早速、鏡の前でやってみました。案の定、裏向きだったパケットがひっくり返っても裏向きであることが、通常の天海リヴォルブよりもはっきりと見えるのです。素早くやれば、たぶんそのことが関知されることはないかもしれません。

しかし通常の天海リヴォルブをやっても、左手のパケットでの矛盾がそれほど目立たないのに、どうしてバノンのやり方をやると右手のパケットの矛盾が目立つのでしょう。

鏡の前で両手首をねじること30分、その理由がわかりました。どちらのやり方にしても、左手がデックの下にあり、右手がデックの上にあることと、そして技法を始めるまえにトップカードの裏面が明瞭に見えている点に理由があったのです。

バノンのやり方では、明瞭に裏面が見えているデックを右手が上からつかむところが明瞭に見え、右手が右に180度返ったのが明瞭に見えます。ところが通常の天海リヴォルブでは、右手が上半分を取ったとき、左手がどのように下半分を持っているかは、明瞭に見えるということはありません。

すなわちバノンのやり方では、前半の状態と後半の状態のイメージのつながりが見え、通常のやり方では、後半の状態は明瞭に見えるとしても、前半の状態とのイメージのつながりが見えにくいということです。

この違いは、鏡を見ずに自分の目線から見て考えたのでは、絶対に気づかなかったことでしょう。自分の目線からでは、通常のリヴォルブでさえ、左手の動作の矛盾が明瞭に見えるため、どちらも怪しさの度合いは同じ程度に見えるからです。

であるとしたら、バノンのやり方はよくないやり方でしょうか。通常の両手の返し方でやるかぎりは、よくないやり方と言わざるを得ません。しかしたったひとつのことを変えるだけで、通常のやり方と同じレベルのものになることを見つけました。

それはいったいどんなことでしょう。皆さんも鏡の前で30分ぐらい両手首をねじれば、それがわかるかもしれません。