= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.329

2015年8月14日

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直せないカードトリックを直そうとすると

"カードトリックを直す"という意味の英語のタイトルの本があります。そのタイトルの意味することと、前書に書かれていることから、この本はカードトリックを磨き上げることに関する本だと思いました。ところがどっこい、磨き上げるどころか、その正反対のトリックが書かれているのを見つけました。

あなたが私と同じように感じるかどうかはわかりませんが、とにかく読んでみてください。原著から忠実に翻訳いたします。

サンドイッチフォーステビンス

これは、デイヴ・ソロモンが考えたサンドイッチトリックのアプローチに、私が小さな直しを加えたものです。ソロモンは選ばれたカードを判定するのに、マルローのアイデアを使いました。このトリックは、サイ・ステビンススタックを使った手順の中に組み込む必要があります。(雑誌"ハイエロファント"No.5/6のマルローの'サイ・ステビンスソーサリー'を参照のこと)。

方 法

1)デックをフォールスシャフルしてから1人の客の前に置きます。客にカードを好きなだけカットして持ち上げさせますが、テーブルにある程度のカードが残りさえすれば、どれだけカットされてもかまいません。持ち上げたカードのボトムカードをのぞいておぼえさせてから、「そのカードをおぼえたら、持ち上げたカードをよくシャフルしてください」と言います。

2)テーブルに残っているカードを取り上げ、左手に裏向きに置きます。そのパケットをまん中あたりからカットして、下半分の上に客の持っているパケットをのせさせ、その上にあなたが持ち上げたパケットを重ねてそろえます。

3)いまデックのトップカードは、マルローのレフトオーバープリンシプル("Faro COntrolled Miracles")によって、選ばれたカードを示すキーカードとなっています。サイ・ステビンスのシステムによって、キーカードは選ばれたカードのつぎのカードです。ですからそこでリフルシャフルしますが、最後にトップカードを落とすときにグリンプスするのです。あとはいくらシャフルしてもかまいません。選ばれたカードは完全に行方不明になりますが、それが何のカードであるかわかっています。

4)デックをディーリングポジションに持ち、トップに2枚を表向きにして、「この2枚のカードで選ばれたカードを見つけます」と言います。その2枚を客に渡し、デックをリボンスプレッドして、客に2枚を表向きにスプレッドの好きなところに入れさせます。

5)スプレッドをスクープして取り上げ、表向きの2枚をボトムにカットします。1回のカットではなく、数回カットし、オーバーハンドシャフルも交えます。リバースされたカードはナチュラルブレークでわかりますから、ボトムに運ぶのは難しいことではありません。

6)デックをファローシャフルの体勢に持ちます。(写真61)。右親指がデックの左サイドにかかっています。その位置で右親指でカードのサイドをリフルして、選ばれたカードを見つけます。ゆっくりリフルしてはいけません。いちど目で見つからなければ、その回は中央あたりで分けてファローシャフルします。それからもういちどやって選ばれたカードを見つけます。

そのようにして選ばれたカードを見つけたら、そのカードが右手のボトムカードになるように分けて、左手のパケットと右手のパケットをウィーヴしますが、選ばれたカードが左手の表向きの2枚の間に入るようにします。それからデックをカットして、サンドイッチの3枚を中央に運びます。

7)デックを裏向きにリボンスプレッドして、サンドイッチ状態になったのを見せます。選ばれたカードを名乗らせてから、はさまれたカードを抜いて表を見せます。


サイ・ステビンススタックによって選ばれたカードを判定するということ自体は、たいへん強力な不思議さを生み出すものです。その原理がマルローのレフトオーバープリンシプルなどと言っていますが、この原理がマルロー以前からあったことは誰でも知っています。この著者はマルローの名前を借りて、書いていることを権威づけようとする癖があります。話が脱線しました。私には話が脱線する癖があるようです。

このサイ・ステビンスの原理は、それだけで使っても強力な効果を生み出します。たとえば、上記の説明の通りに進めて、デックをリフルシャフルしてグリンプスしたあと、相手に選んだカードを念じさせ、それを言い当てるのです。十分マジックとして成立します。それだけこの原理は素晴らしいのです。

つぎにファローシャフルで3枚をサンドイッチ状態にする技法です。これは不思議さを生み出すものでもなく、それほど全体の不思議さを減じるものでもありません。選ばれたカードを2枚で見つけるといってやるのですから、そのセリフ通りのことをやったのであって、密かにはさんだわけではありません。

以上2つの部品の組み合わせまでは、それほど問題はありませんが、選ばれたカードを判定するという技法という部品が、組合せうんぬんの以前に、その技法自体に大問題があります。デックの方を見てリフルする姿を想像してください。怪しい動作どころか、カードを探しているということが明白です。

しかもその方法で致命的なのは、選ばれたカードがトップとかボトムの近くにあった場合には、そこで分けてファローシャフルするのでしょうか。そんなことをするぐらいなら、最初からサイ・ステビンススタックを使わずに、選ばれたカードをクリンプした方がましです。デックを相手にシャフルさせてから、クリンプカードを中央近くにカットすれば、そのままそこからカットしてファローシャフルに続けられます。

すなわちこのトリックにおける組合せの悪さは、サイ・ステビンススタックを使って選ばれたカードを知ることと、カードをリフルしてグリンプスしてそのカードを見つけることにあります。

はてさて、私がこのトリックのような現象を演じようとしたら、つぎのようにやるでしょう。作品として書くほどのものではありませんが。

デックを両手の間に広げて、相手に1枚指ささせ、相手にそのカードの表を見せるとき、アップジョグクリンプ("Card Magic Library第10巻、43ページ)します。そしてデックを相手に渡し、よくシャフルさせます。

デックを受け取り、「あなたのカードを見つけるのに2枚のカードを使います」というセリフを言いながら何回かカットしますが、クリンプカードをボトムに運びます。そして「この2枚がいいでしょう」とセリフを続けて、トップの2枚を表向きにします。

それら2枚を表向きにデックの中央に入れて、押し込みますが、それらの下にブレークを作り、ダブルカットによってそれらをボトムに運びます。クリンプカードは中央に移ります。

クリンプカードの下でカットして、2組をリフルシャフルのために横向きにテーブルに置きます。一方のボトムの2枚の間に、他方のボトムの1枚をはさむのに、ファローシャフルする必要はありません。一方から1枚落とし、他方から1枚落とし、そのあとは最初の方から落としてふつうにリフルシャフルすればよいのです。
シャフル後に1回カットします。

そもそも今回取り上げたトリックは、部品の組合せの問題もさることながら、ファローシャフルでサンドイッチにするという、サンドイッチ現象でのインパクトを与えられない手法を採用したことに、いくらいじりまわしてもよい作品にはならない、という根本的な病巣を含んでいたのです。

そのようなものは、一部を変えてもどうにもなりません。一部を変えるのではなく、思い切って大手術をしなくてはならない場合もあるのです。大手術をしても直らない場合には、捨て去るしかありません。