= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.336

2015年10月2日

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リビレーションのインパクト

2015年9月20日に開催された、プリアラマジッククラブの例会に出席してきました。その中のひとつのコーナーで、初心者向けのカードマジックとして、司会のミステラさんが、つぎのようなトリックを解説していました。

赤い8と黒い9を見せて、その2枚をデックの中央に入れます。魔法をかけると、それらがトップから現れます。やり方は皆さんよくご存じの、シミラーツインを使ったやり方です。最初に見せたのはダイヤの8とクラブの9でした。あとから出てきたのはクラブの8とダイヤの9でした。

荒木会長が補足として、クラブの8とスペードの9のペアと、クラブの9とスペードの8のように、同じ色の2枚を使った方が違いが気づかれにくいし、「黒い8と9を使います」と言った方が、より明確に表現できる、と指摘されていました。

そして荒木会長は、トップから2枚を現すのではなく、あらかじめあとから現す2枚をトップとボトムに置いておき、ホフジンサートス(もしくはコンテスロー)によって現すやり方を説明してくれました。

トップから2枚を現すのと、デックを投げて現すのとで、こんなにも違いがあるのかと驚きました。初心者向けのトリックですから、いままでそのようなことを深く考えたことがありませんでしたが、今回の荒木会長のおかげで、とても重要なことがわかりました。その理由はつぎのようなことであるように思います。

2枚を右手に持って示したときのイメージをイメージ1とします。そしてあとで現してから右手に2枚持って示したときのイメージをイメージ2とします。どちらも見かけはまったく同じです。

トップから2枚を現すとすると、
イメージ1で2枚を見せてからデックの中央に入れ、イメージ2で示す間に、トップから2枚を取ってイメージ2の形にする、という動作が入ります。しかしながらホフジンサートスでやると、イメージ1で2枚を見せてからデックの中に入れ、そのあと瞬間的にイメージ1の状態が再現したように見えます。

マジックというのは、結果を見せるときのやり方によって、効果のインパクトがまったく違ってくるものだと、今回は勉強になりました。

ところで、デックを右手から左手に投げて、トップカードとボトムカードを右手に残す技法は、通常'ホフジンサートス'と呼ばれていますが、ロベール・ウーダン著の"The Secrets of Conjuring and Magic" (1878年)に解説されている’The 'Ladies' Looking Glass'というトリックの中で使われており、コンテ(Comte)が考案した技法だと記されています。このことから、この技法は'コンテスロー'とも呼ばれています。

はてさてその日は私もビジターマジシャンとして、'水と油を混ぜる方法'というトリックをやらせていただきましたが、ひとつやろうとしてやり忘れたことがありました。

その日は舞台の上に置かれたテーブルを使って演じたのですが、テーブル面が観客の目線よりも高く、テーブルに置いたカードの面は見えません。スクリーンにテーブル面が見える映像を流してはいたのですが、私は舞台の状況を事前に見て、とっさに対処法を考えました。

最後に4枚の黒いカードの上に4枚の赤いカードを置き、魔法をかけると赤と黒が交互に混ざってしまいます。私はそのそのクライマックスで、カードの表面を観客の方に傾けて、赤と黒が交互に混ざったことを見せたあと、テーブルに広げて置いて終わってしまいました。

事前に考えた対処法とは、両手の間に広げて混ざったのを見せたあと、そろえてから上から1枚のカードを取り、裏表をよく見せてからテーブルに置きます。そのあとも1枚ずつ裏表を見せてから「赤、黒、赤、黒、、」と言いながら、テーブルに置いていくのです。

そうすれば混ざったことがはっきりとわかるだけでなく、仕掛けカードがないことをはっきりと表現できたのです。混ざっていることを2回見せることになりますが、会場が広いので、「後ろの方はよく見えなかったと思いますので、はっきりとお見せしましょう」と言ってやれば、おかしくはないはずです。

やろうと思っていたとをやり忘れるとは、残念無念、悔恨の残る夜でありました。