= 加藤英夫のカードマジック研究報告 =

No.355

2016年2月12日

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技法を演技の脈絡に埋没させる

新年早々、と言ってもだいぶ経ってしまいましたが、マジックカフェにつぎのような投稿がありました。

新年を迎えるにあたって、いままでやったことのないカードの技法を学ぼうという決意をいたしました。私としては、最初にまだマスターしていなかった、トップパームから始めたいと思っています。そのようなことについて、皆さんの経験や計画があったらこのスレッドに投稿してください。

当然ながら、"私はこのようなことが練習したい"という投稿が続出します。私はつぎのように投稿いたしました。

このスレッドを読んで私は思いつきました。それは新しい技法を習得するということではなく、技法をどのように演技の脈絡の中に埋め込むか、ということを考えることを今年のひとっのテーマにしてみようということです。

たとえば、デックのトップからパームするということ自体は、脈絡のご一部のパーツでしかありません。まず右手をデックにかける理由が必要です。右手でデックをつかんだあとは、左手をデックから離した方がよいかもしれません。

もうひとつの例としては、ダブルリフトのあと、バーノンリプレイスメントでカードをデックに置いたあとのことです。バーノンはたいていの場合、リプレイスしたあと、左手でそのカードをテーブルの左の方に置くそうです。すなわち、カードを左の方に置くという自然で理由のある動作によって、秘密の技法をカバーしているわけです。

いま思いついたばかりのアイデアですが、'天海リヴォルブ'でも、そのようにあとの動作で秘密の動作をカバーすることができます。リヴォルブしたあとすぐ、左手で表向きの半分をテーブルに置き、続けて裏向きの半分を表向きの半分の左隣りに置き、リフルシャフルに続けます。

そのようなことを考え始めたら、つぎからつぎへとアイデアが浮かび始めました。刺激を与えてくれて有り難うございました。


マジックカフェにこのように投稿したあと、いくつかの技法について、前後の動作によってカバーできる例がないか考えてみました。バーノンリプレイスメントについて投稿したので、タマリッツリプレイスメント("Card Magic Library"第1巻、40ページ)についても、そのようなことを当てはめることができるのを見つけました。

タマリッツリプレイスメントは、ダブルターンオーバーして表を見せてから、裏返しに戻すときに、上の1枚だけをデックより少し前に置き、下の1枚はデックにそろえてしまう技法です。

私は以前から、表向きのときはデックの右サイドに沿っているカードを、裏返したときに前にずらすという動作が、以下にも"これ見よがし"の感じがして、何とかならないだろうか、と思っていました。

今回思いついたことは、ごくとりとめもないことと言われればそれまでですが、私には"目から鱗"とも言えるものでした。

その解決法はただ一言、表向きに返したときに、デックより少し前にずれた位置に置くことです。

表向きにするのはカードの表を相手に見せるという積極的な行為ですから、前にずらして置くのはおかしくありません。むしろ前にずらした置いた方が、演技としては表現力が高いと言えます。

前にずれた状態で表向きのカードの右サイドをつかみ、タマリッツリプレイスメントを行うのです。いったんデックの右サイドまで少し戻してから返すことになりますが、その動きは返す動作の中で目立つことはありません。鏡を見てやっていただければ、ナチュラルなやり方であることがおかわりになるはずです。

そのようにやると、まえにずれている表向きのカードをその位置で裏向きにしたように見えます。"これ見よがし"の感じが和らぎます。

バーノンリプレイスメントの例では、リプレイスしたあとにそのカードを左の方に置くという、技法のあとの動作でカバーしていますが、今回思いついたタマリッツリプレイスメントの例では、技法を行うまえに、その技法がよりナチュラルに見えるような状態にする、ということでカバーしているわけです。