カードマジック研究室

No. 003

2016年8月5日




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エルムズレイカウントのフィネス

マジックカフェにつぎのような質問投稿がありました。

エルムズレイカウントを始める準備として、トップカードを左上にずらすとき、2枚目のカードもずれてしまいます。それを防ぐにはどうしたらよいでしょうか。

この投稿を読んで、私はつぎのように回答いたしました。

左人さし指をパケットの右上エッジに当てていれば、2枚目のカードがずれることはありません。

ところでトップカードを少し左上にずらすというのは、けしてエルムズレイカウントの準備の動作ではありません。それはあくまでも1枚目をピールして取る動作の始まりであるべきです。

たぶんあなたがそのように勘違いしたのは、ロベルト・ジョビー氏の解説を読んだからでしょう。ジョビー氏は、先にトップカードを左上にずらしてから、そのあとパケットを右手でつかむと説明しています。そうではなくて、先に右手でパケットをつかみ、それからトップカードをずらして取るのです。


ジョビー氏はそのような望ましくないカウントの始め方のみならず、左人さし指をエンドに当てず、右上コーナーの下に当てています。これでは、マジックカフェの質問者が困難に遭遇したのも当然です。310ページ(英語版)の図を見てください。この状態で左親指でトップカードを左上にずらしたら、他のカードまで広がってしまいます。

左手がトップカードをずらしてから右手がパケットをつかむというのがよくないことは、"Card Magic Library"第2巻で、詳細に説明いたしました。そのときの説明には、カウフマンが"ジニーフォーラム"での投稿も書きました。つぎのようなものでした。

“パケットがディーリングポジションにある状態からエルムズレイカウントを開始する場合、まずやるべきことは、右手にパケットを移すことです。そこで適切なジェスチャーを行い、それから左手にカードを取っていくのです。そうした方が、カードをカウントする動作がクリアなものとなります”。

たしかに右手にパケットを持った状態からスタートすれば、カウントの動作が明確なものとなります。しかしながら、左手に持ったパケットをいったん右手に移してから、少し間を取るということが、手順にスムーズな流れを断ち切ってしまう場合もあります。

左手にパケットを持った状態からエルムズレイカウントを始めるとき、どのようにしたらうまくできるでしょうか。それは左手のパケットの持ち方にかかっていることに気づきました。

トップカードをピールオフするとき、左親指をトップカードの裏面中央に当てるわけですが、最初から左親指を裏面中央に当てていてはいけません。そうではなく、親指を左に伸ばして左上サイドに当てた状態からスタートするのです。

右手がパケットをつかんでから、それから左親指を曲げて裏面中央に当てて、ピールオフを開始するのです。

その左親指の動きが、カードを取っていく動作の初めの部分として、カウント動作のイメージを明確にするのです。できれば親指だけでなく、他の指も少し曲げることによってパケットをつかむ感じを出すとよいでしょう。

以上のように、エルムズレイカウントの初期動作として、そのようにメリハリをつけてやるのと、先にトップカードをずらして始めるようなやり方では、"月とスッポン"の違いがあると言ったら、大げさでしょうか。

今回この記事を書くにあたって、"Card Magic Library"第2巻に書いた、'エルムズレイカウントのエッセンス'を再読しました。人さし指を前エンドに当てて、カードがずれないようにすることも書いてありますし、右手がパケットをつかむまえにトップガードをずらしてはいけないことも書いてあります。

その他にも様々なポイントが書かれていて、エルムズレイカウントの解説としては手前味噌ながら、かなりよく書けていると思います。それぞれのエッセンスの概略を記しておきます。

エッセンス1 デ・ラ・トーレの常識を捨てる

ホセ・デ・ラ・トーレは、エルムズレイカウントは、技法を行わない通常のカウントと同じに見えるようにやらなければならないと主張し、ディーリングポジションから右手に取っていく方法がベストだと述べています。私は全面的に反論を書きました。

技法というものは普段の動作と同じに見えるようにやる、などという考えは、マジックを演劇的なとらえ方をしていない証拠です。そもそも観客はマジシャンが普段どのようにカードを数えるかを知りません。たとえ知っていても、普段通りのやり方が、演技として強調したいことを表現するのに向いているとはかぎりません。エルムズレイカウントとは、カードを数えるのではなく、持っている枚数のカードのすべての面をはっきりと見せたとように見せることです。そのことから、エルムズレイカウント習得は出発すべきです。

エッセンス2 カードを取った手の指を伸ばす

カードを引いて取った左手は、取って左前方に運んだとき、ディーリンググリップの形のままではなく、軽く伸ばすようにします。その方がカードを取った雰囲気が出るからです。ただし解説の図では、ジョビーの示している図に影響されて、伸ばすだけでなく、やや指を広げているのが描かれています。この図は適切ではありませんでした。軽く伸ばすだけにすべきでした。

エッセンス3 ブロックプッシュオフは、プッシュオフではなく、プルである

ダブルプッシュオフは右親指で押すのではなく、人さし指と中指で引くようにします。

エッセンス4 カードを取る手でパケットを持った状態から始めない

ディーリンググリップに持ったパケットに右手をかけてカウントを始めると、カードを数え取っていく動作のスタートとしては、見た目が曖昧になります。それをいかにメリハリをつけるか、ということが書かれています。

エッセンス5 カードを取る手は往復ではなく、一方通行で

左手でカードを取ってそのままパケットの方に戻す動作を続けると、カードを取る動作よりも、カードを上から下にまわす動作に見えてしまいます。取って前方に運んで一瞬止めて、そして戻すようにします。

エッセンス6 右手を動かさない

右手を左手と同程度に動かすと、やはりカードを上から下にまわしている感じになってしまいます。完全に動かさないというのではなく、リズムを取るための最小限の動きにとどめるべきです。


このあともいくつかのポイントが書かれています。どれも図でよくわかるように解説されていますので、まだお読みでない方は、ぜひ読んでください。