カードマジック研究室

No. 007

2016年9月2日




忘れたおかげで

またまたやってしまいました。先週号でつぎのように書きました。

さて、アイデアを発展させるには、どの観点に着目したらよいでしょうか。それは、ボトムにどのようなカードをセットしておくか、ということが糸口になります。どのように発展していくかは、また次号にて。

とこのように書いた時点では、それがどのようなアイデアかわかっていたのですが、それを記録しておかなかったために、いざ今週号を書こうとしたときに、それがどんなことであったか思い出せないのです。

さあ困りました。色々と考えても、その文章に適合したアイデアは出てきません。どうしたらこの窮地を脱することができるでしょうか。

"困ったときには神頼み"ではなく、"困ったときにはオズボーン頼み"という格言が、クリエーションの世界にはあります。

オズボーンのチェックスリストの第4番目に、"拡大"というのがあります。これはカードマジックにおいては、"複数化"ということにも該当します。ジョーカー1枚を選ばれたカードに変化させるという現象を、ランダムな4枚のカードを選ばれた4枚のカードに変化させる、という現象に発展させるということを思いつきました。

それはクリエーションの新たな出発点です。喜びいさんで考え始めると、すぐに壁にぶつかりました。4枚の選ばれたカードを現すには、テープつきカードをそれぞれの選ばれたカードにくっつけなければなりません。これはたいへんなプロセスが必要です。

4枚の選ばれたカードを現すという現象は、すぐにギブアップとなりました。そこでまたまたオズボーンのチェックリストの登場です。第6番目に"代用"というのがあります。"代用"には、"置き換え"ということも含まれます。4枚の選ばれたカードを現す代わりに、'4枚のAを現す'という現象に置き換えることを思いつきました。

特定のカードを現すなら、現すカードに初めから他のカードをくっつけておけば、くっつけたカードを剥がしてやれば、目的のカードが現れることになります。

このように考えてきたら、面白いことが起こりました。'カードマジック研究室'第6回での'変身ジョーカー'改良の出発点は、"ファローシャフルを使いたくない"ということにありました。しかしながら今回、4枚のカードを変化させるという目的においては、1枚ずつデックの中に入れるよりも、ファローシャフルでいっぺんに4枚のカードを変化させた方が:決定的に優れていると気づいたのです。

ファローシャフルを省きたいと考え始めて、考えた末に、ファローシャフルの機能が絶大に発揮されるやり方を見つけたのです。というわけで私の最新作ができました。

ときにはこういうこともある
= 加藤英夫、2016年9月1日 =

準 備

Aではないバラバラの4枚のカードの裏面中央に、ダブルテープの小片を貼ります。例によって指でテープをこすってテープをしっかりくっつけると同時に、テープの接着力を弱めておきます。

これらのカードの裏面に、Aをそれぞれくっつけます。そしてデックのトップから10枚目、20枚目、30枚目、40枚目にセットします。その枚数目はくっついたカードを1枚と見なしての枚数目です。

方 法

デックを表向きにリボンスプレッドして、よく混ざっていることを示します。カードをそろえて裏向きに左手に持ちます。

「これから4枚のAを使ってマジックをやりますが、まず目をつぶってAを見つけます」と言います。

目をつぶり、カードを右手に送っていきます。10枚ごとにダブルのカードがあることと、それがシックカードのようになっていることによって、ダブルカードを見つけ、「これが1枚目のAです」と言って、横向きに表向きに返します。返したあとカードを送り続けます。

そのようにして、4枚目のダブルカードを表向きに返したとき、目を開けて視線をカードの方に向けます。そのときまだカードをそろえてなくて、いまひっくり返したダブルカードの表が見えている形にしておきます。そしてそれがAでないのに気づいて、驚く演技しをします。

カードをそろえ、テーブルにリボンスプレッドします。そしてスプレッドを見渡して、「ときにはこういうこともあるんです」と言って、スプレッドを左から右にターンオーバーします。そしてスプレッドをそろえます。

「このような場合には、マジシャンは魔法のシャフルというのを使うんです」と言って、ファローシャフルします。インでもアウトでも、1, 2枚ずれていてもかまいません。ただし、全部1枚おきにウィーヴさせなければいけません。そしてカードを強く押し込んでそろえます。

リボンスプレッドします。「さてどうなっているでしょうか」と言って、スプレッドから裏向きのカードを抜き出して、表向きに返していき、4枚のAに変化しているのを見せます。

「というわけで4枚のAが見つかりましたので、4枚のAを使ったマジックをお見せします」と言って、それなりのトリックに続けます。もちろん、このトリックだけで終わってもかまいません。

というわけで、今週号も何とか成果を出せたようです。歳をとるというのは本当に有り難いことです。