カードマジック研究室

No. 040

2017年4月14日



娼婦の館で教えられたこと

私は今朝、目が覚める寸前に奇妙な夢を見ました。それは私が階段を上っているところから始まりました。なぜかその館は娼婦の館でありました。踊り場までくると、上からカードが1枚ひらひらと落ちてきました。

そのカードを取り上げてから、ふと横を見るとそこに扉があり、スペードのマークが貼ってありました。カードを見るとそれはスペードの7でした。扉を開けて中に入ると、廊下に並んでいるいくつかの部屋の扉に、スペードのAから順にいくつかの扉が並んでいたので、私はそっとスペードの7の扉を開きました。

"どんな美女が待っているのだろうか"という思いもよぎりました。もしかしたらそんな欲望がこの夢を見せさていたのでしょうか。でもそうではありませんでした。部屋は広く、中では10人ぐらいの人が集まって、1人の人がマジックを教えていました。そこはマジッククラブの会場だったのです。

皆が振り向き、怪訝な顔をして私のまわりに集まってきました。私と同年配の人が「あなたことは知っています。私はマジックは趣味で、本業は小説家です。よろしければこれを読んでください」と言って、小説の雑誌みたいなものをさし出しました。

「すみません、私は日本の小説は読まないんです。日本の小説は嘘っぽく感じてしまうからです」と私はその人に言いました。続いて私はマジックについてとんでもなく奇妙なことを言いました。

「皆さんマジックをやるとき、本当の魔法使いのように演じることを目指していませんか。そんなマジックの見せ方は嘘っぽくて、一般の人に好まれないのです。本当の魔法使いなんてないことを人々は知っているのですから」と。

ここで目が覚めました。

夢の中で小説について言ったことは、あながち間違いではありません。ただしそれは日本の小説について言ったのではなく、嘘っぽさを感じる小説は嫌いだというのが、私の小説に対する嗜好であるということです。毎日のように見る韓ドラでも、剣士が空中を飛んで戦うシーンがあるようなものは見ません。ファンタジーっぽい作りのものも見ません。言ってみれば、ノンフィクションに近いものの方が楽しめるのです。

ですから、魔法使いのように演ずるマジックは、小説で言えばファンタジー小説のようなものです。魔法使いがいとも簡単に相手をやっつけてしまうようなことは、私には受け入れられません。たぶんそのような小説に対する私の嗜好が、魔法使いのように演ずるマジックが嫌いな原因なのでしょう。へクター・マンチャのあのすごいマジックを初めてみたときに、嫌悪感さえ感じたのはそんなことに関係しているかもしれません。

魔法使いが魔法によって相手を打ちのめすのと同じように、魔法使いのように演ずるマジシャンは相手を打ちのめします。打ちのめすようなすごいことをやるまでは許しても、それを自慢げに演じられたら、私は拒絶反応を起こします。そこまで強烈に反応しなくても、もしかしたらマジックを見た人々の中にはそのような思いが大なり小なり起こっているのかもしれません。


もちろん人には好みというものがありますから、私の嗜好だけで判断してもいけませんが、そのような可能性があることは、以前から今回とは異なる表現でお伝えしてきました。今回は娼婦の館で見た光景から、そのような私の考え方を再確認させられたのでした。