カードマジック研究室

No. 047

2017年6月2日



アップジョグクリンプ

今回は、動画の方で詳しく説明していますので、ここでは説明いたしません。以下の動画をご覧ください。

https://youtu.be/G2GwhaMg77o



私の頭の中には、まだ天海フォーラムで澤浩氏のマジックを見たときの余韻が残っています。そして打ち合わせで色々と澤さんと話したことも忘れられません。とはいっても、忘れると大変ですから、ここにいくつかのことを記録しておくことにします。

打ち合わせで澤さんは、"マジックを演ずるときには'エモーション'を表現することが重要である"ということと、"マジックを見せるということは自分を見せることでもある"ということも言っていました。

そのことをフォーラムの対談のときに澤さんが語ったかどうか、記憶に定かではありませんが、少なくとも詳しくは話さなかったと思います。とても重要なことです。私の解釈ではありますが、つぎのようなことです。

まず澤さんが'オキ'というロープマジックを演ずるとき、カウボーイの雰囲気でとても明るい表情で登場しました。その笑顔を見るだけで、「皆さんこんにちわ、私のマジックを楽しんでください」というメーセッジを、私はそのとき感じました。

エモーションを表現するということは、顔や手つきでそのような演技をするというまえに、そのときに伝えたいメッセージや表現したい雰囲気が、まず心の中になければなりません。たとえば何かが突然指先に現れて、自分もびっくりするとします。驚く表情をするには、自分が驚くという気持ちを持っていることが、その表現を生きたものにします。

手に握った物を消失させるときは、ただ手を開くのではなく、「消えていまいました」という気持ちを込めると、演技がエモーションを含んだものとなります。

もしかすると、そのようにエモーション表現を演技に含める練習をするには、動作をするときに、心の中でセリフをつぶやきながらやるとよいかもしれません。「コインを左手に握りますよ。ほら消えてしまいました。どこに行ったでしょうね」と心の中で言って、ポケットの方を向いて、コインを取り出します。「ここにありましたよ」と心の中で言います。

ただしエモーションを表現するのに注意しなければならないことがあります。オーバーエモーショナルになってはいけないということです。ひとつひとつの動作をオーバーにやると、嫌みな演技になってしまいます。望ましいエモーションの表現の実例としては、石田天海、フレッド・キャップス、そして澤浩が参考になると思います。

つぎに'マジックを見せることは、自分を見せることでもある'ということについては、おそらくそんなことは、たいていのマジシャンは考えてこなかったでしょう。プロもアマもです。素晴らしいマジックを見せればそれでいい、と考えているマジシャンが大半でしょう。

でもいくらうまく演じたとしても、「どうだうまいだろう」という感じに見えてはなりません。あなたが生意気な人間に見えてしまいます。このことは天海師が言われたこととして、私もすでに書き残しました。しかしながら最近ダイ・バーノンのマジックを大々的に研究していますが、バーノンもほんとんど同じことを述べているのを見つけました。"Genii"1989年5月号に、バーノンがつぎのように書いています。

マジシャンにとって致命的なことは、自分が優れているということを誇示することです。冗談でそのような態度を見せているのがわかるような場合とか、悪魔的なキャラクターを演じているのがはっきりしている場合は例外です。観客はあなたがそのようなキャラクターを演じていることがわかっていますから。しかしながら、あなたが実際に観客よりもクレバーだと思い、テクニックも優れていると思って演じるとしたら、たとえどのようにすごいことをやっても、観客はあなたに好感を抱くはずがありません。

上記の例のように、好感を感じさせられるかどうかということについてのみならず、自分独自のスタイルを見せるとか、なぜ自分がそこでマジックをやる立場にいるか、ということを感じさせることまでが、自分を見せるということにつながってきます。

マジックを見せた結果、見ていただいた人々との関係がよくなることが重要である、ということを澤さんの言葉の私の勝手な解釈の結論としておきます。