カードマジック研究室

No. 048

2017年6月9日



マジシャンのタイプ

今回は、カードマジックそのものについてではなく、人がマジシャンとして望ましい存在であるためのあり方について、マジシャンのタイプ別に考察したいと思います。

マジックを見て楽しむ側の人々にとってマジシャンとは、マジックを演ずる人、すなわちパフォーマーであるというのが通常の認識であると思います。しかしながらマジックの世界の内側から見たら、マジシャンには様々なタイプのマジシャンが存在します。

もちろんパフォーマーが中心ではありますが、音楽で演奏者と作曲者が異なるのと同じように、パフォーマーとクリエーターは異なるものであり、他にも異なる資質のタイプが存在します。とりあえず思いつくままにタイプを列挙してみましょう。

パフォーマー、クリエーター、ディレクター、コレクター、ヒストリアン、リサーチャー、ティーチャー、レクチャラー、ホビイスト、デモンストレーター、クラフトマン、ディストリビューター、クリティック、オーサー、イラストレーター、エディター、パブリッシャー。

これらのタイプは、いくつかのタイプを兼ねて持つということがありますが、ここでは個々のタイプについて個別に考察していきます。

コレクターは通常、集めたものを活用することよりも、集めること自体に情熱を注ぎますので、一見マジック界に貢献しないように思えますが、集めたものを整理して、情報として他のマジシャンに提供したとき、マジック界に多大な貢献をする場合があります。

ヒストリアン(歴史研究家)は、知的コレクターの一部を占める特殊なタイプです。歴史に関する知識収集のスペシャリストです。マジックに関する歴史を書き残すということは、マジシャンへの知識の提供のみならず、マジックを文化活動の一分野として、一般の人々に知らしめるのに貢献します。

ただしヒストリアンのマジック界への貢献には、危険な側面があります。ヒストリアンは研究発表するとき、いくつかの事象を自分の判断で並べる傾向があります。そこにヒストリアンの意見が含まれた場合、事実を曲げてしまう可能性があります。

したがってヒストリアンに望まれることは、関連する情報をなるべく多く示すことと、個人的な判断や推測を含めずに示すことです。持っている一部の情報を隠し、都合のよい順番で示すことは、ヒストリアンにとって罪ある行為であると言わざるを得ません。ましてや、嘘を交えることは犯罪です。

ヒストリアンが多くの情報を望ましい形で提供したとき、多くのタイプのマジシャンが恩恵を受けることになります。自分のかかわっているものの土台を把握し、その土台の上に自分の貢献を重ねていくことができるからです。

ティーチャー(先生)とレクチャラーは(講師)は、人にマジックを教えるという点で似ていますが、教え方の度合いの違いがあります。レクチャラーから指導を受けたマジシャンは、必ずしも指導されたことをマスターするとはかぎりませんが、先生から指導を受けた生徒は、指導されたことをマスターすることが期待されます。

したがって先生から指導を受ける場合は、大きなリスクを負います。先生が優れていなければ、望ましくないことを体得することになります。

クリエーターにとって望ましいことは、個性的な作品を生み出すとか、多くの作品を生み出すことなどが望まれますが、他人のアイデアから影響を受けたり、借用した場合には、そのことをクレジットすることがたいへん重要です。人のアイデアを使っているのを知っていてクレジットしないのは、盗用という犯罪行為です。知らないで発表するのは、自分自身を貶めます。

さて、マジシャンとしてもっとも多くを占めるパァフォーマーに望まれることは何でしょうか。ひとつだけ、もっとも重要なことを述べさせていただけるとすれば、好感を持たれるように演技するということです。それにはどうしたらよいかを考察しようとすると、今回の紙幅だけでは足りません。いまバーノンの研究をやっていますが、バーノンがそのことについてするどく指摘しているのを見つけました。いつかお話しすることにいたしましょう。

あまり長く書きすぎるのも、パフォーマーが長くやり過ぎるのと同じですから、今日はこのへんで。